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本誌記事 連載 カスタマーサクセスAtoZ 第14回

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Trend 連載

カスタマーサクセス向けITソリューション導入
“使いこなし”と成功に導く方法論

カスタマーサクセスの実践において、ツール導入により「お客様に対する案内やフォローアップ」の自動化に挑む企業が増えている。だが、ツールは導入するだけですべて解決してくれるものではない。カスタマーサクセスツールの役割やツール導入の障壁、その乗り越え方について、カスタマーサクセスツール「openpage」を事例に解説する。

藤島 誓也
Writer
openpage 代表取締役
藤島 誓也
東大ベンチャー、大手出版社と共同でコンテンツマーケティング製品を推進。その後、ビズリーチにてCSM(カスタマーサクセスマネジメント)チームを立ち上げる。2018年、SaaSスタートアップから大手SI企業まで米国流のデジタルカスタマーサクセスの導入を支援するopenpageを設立、伊藤忠テクノロジーベンチャーズより資金調達する。note、Twitter、YouTubeでカスタマーサクセスの最先端情報を発信している。

 カスタマーサクセスを支援するソリューションやツールには、さまざまな機能が搭載されている。だが、ソリューションは「導入」しただけで使いこなせるものではない。

 まず、カスタマーサポートとの違いのひとつでもある点だが、カスタマーサクセスは中長期のコミュニケーションが必要である。このため「プロジェクトマネジメント」の要素が発生する。また、入ってきた問い合わせに回答するだけでなく、自社のソリューションに関する基本的な活用方法を知ってもらい、ゴールに到達するまでを支援することがミッションであるため、顧客への“情報提供”が成否を分けるカギとなる。個別の状況に合わせた情報を提供することでカスタマーサクセスを実現する。顧客接点でも、サポートとは異なる機能や使いこなしポイントがあるというわけだ。カスタマーサクセスソリューションを導入、使いこなすための具体的なプロセスについて、当社のソリューションを例に解説する。

 カスタマーサクセス支援ツール「openpage」には、顧客別の専用ページを作成できる機能があり、個別の状態に応じたコミュニケーションを専用ページ上で取ることができる。顧客専用ページを、わかりやすく言えば「すごろく」のようにステップとして可視化し、「次はこれ」「その次はこれ」と案内していく。その通りに進めるとカスタマーサクセスを実現できるガイドになっている。

 カスタマーサポートにおいてもカスタマーサクセスにおいても、ツールでコミュニケーションを取るということは、「顧客にセルフサービスをお願いする」ということに等しい。顧客に自ら動いてもらううえでは、さまざまな障壁がある。それを解説する。

ツール導入の5つの障壁

 ツール導入における最初の障壁が環境構築だ。重要となるのはツール導入以前のコミュニケーション設計だ。まず、「そもそも、顧客対応のすべてをデジタル化することはできない」と割り切らなければならない。セルフサービスで行うべきもの、人的に行うべきものを整理することから着手すべきだ。

 次の障壁が組織啓蒙。一般的にカスタマーサポートもカスタマーサクセスも、「人手」による顧客対応を行う文化や風土があり、デジタル環境を構築しても「人手でやったほうがよい」と考える現場の担当者は少なくない。事前に「どの範囲をデジタル対応するのがよいか」「デジタルを活用することで、チームの生産性はどれだけ上がるのか」など、社内の認識を合わせる勉強会が必要となる。デジタル化は組織全体で進めるもので、ツール導入者だけが1人で動いては、失敗は免れない。顧客対応を行うスタッフの仕事がどのように変わるかまで見据えた設計をしなければならない。また、「人が案内するのではなく、セルフサービスで案内する」という考え方に抵抗がある人も一定数おり、業務内容だけでなく感情面でのフォローも重要となる。

 最後の障壁がエンドユーザー導線だ。エンドユーザーがセルフサービスツール自体を知らないというケースは少なくない。こうした場合、顧客をデジタル案内に誘導する導線設計が重要となる。また、「頼ろうと思ったときに頼ることができる場所」を用意し、知らせておかなければならない。製品の利用開始時期など、顧客が必要とするタイミングで定期的に告知するべきだ。

図 ツールを介したコミュニケーション

図 ツールを介したコミュニケーション

※画像をクリックして拡大できます

導入後は小さな成功を重ねる

 次が導入後の支援フェーズ。ツールを利用開始するには、最初の支援が肝心だ。とくに、「どこをデジタル化するか」が整理できていない企業は多い。まず補助輪となるテンプレートや情報提供は欠かせない。openpageでは、はじめに顧客とのコミュニケーションのどこでツールを使うかを決め、カスタマージャーニーに基づくテンプレートを選択。プリセットの伴走を行い、ときには代行する。

 次いで、旗振り役とMVP(Minimum Viable Product:最小限の製品価値提供)だ。組織啓蒙では社内向けの説明や勉強会の内容を推進する「旗振り役」が欠かせない。過去の成功事例をもとに推進プロセスを助言し、MVPとマイルストーンを整理する。MVP、つまり「最小限のリソースで価値を生み出す状態の定義」を行い、MVPまでの道のりと、小さな成功体験の積み重ねをマイルストーンとして示し、「将来の期待や展望」を見える化、やる気の維持につなげる。

 最後に視認性だ。openpageはクラウドツール(Webサイト)の画面内に設置するツールであるため、設置案を提示することもある。加えて、ランディングページやプレスリリースでの告知、Webサイト以外の営業資料の挿入など、普段目にするチャネルでの掲載も整理することで視認性を高める。

 また、営業やサポートスタッフが顧客に案内する体制を整えておくことも大切だ。

 そして、「役に立つコンテンツ」の拡充が何より欠かせない。顧客がデジタルツールに頼るには、「必要性のある情報」が載っていることが大前提となる。顧客に価値ある情報は何かを整理して拡充することが、顧客のデジタルツール活用の定着につながる。それらを整備し、掲載したうえで、個別に提案していくことで、カスタマーサクセス業務を推進していく。

(2023年12月号 月刊「コールセンタージャパン」掲載)

 

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