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本誌記事 連載 カスタマーサクセスAtoZ 第13回

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Trend 連載

カスタマーサクセスの“未経験者採用”に倣う
サポートの人材難を打開する施策

カスタマーサクセスはまだ生まれたばかりの新しい職種であるため、業務経験者が採用市場(転職サイトや転職エージェントの登録者)に多く存在しない。そのため、カスタマーサクセス職は「未経験者の採用」が主流だ。今回は、採用現場の現状と課題、その背景を分析したうえで、コールセンターなどのカスタマーサポートの採用で役立つ要素を洗い出す。

藤島 誓也
Writer
openpage 代表取締役
藤島 誓也
東大ベンチャー、大手出版社と共同でコンテンツマーケティング製品を推進。その後、ビズリーチにてCSM(カスタマーサクセスマネジメント)チームを立ち上げる。2018年、SaaSスタートアップから大手SI企業まで米国流のデジタルカスタマーサクセスの導入を支援するopenpageを設立、伊藤忠テクノロジーベンチャーズより資金調達する。note、Twitter、YouTubeでカスタマーサクセスの最先端情報を発信している。

 カスタマーサクセス職はカスタマーサポート職以上に経験者が少ない。そのため、多くの企業が「近しい業務内容」の経験や「製品知識」を持つ求職者のなかから、カスタマーサクセスの未経験者を採用している。

 まず業務内容の経験・スキルでカスタマーサクセス職に求められるのは、顧客へ提案する力、問題解決のためのコンサルテーションやプロジェクトマネジメント、問い合わせへの対応、顧客コミュニケーションのテック化/デジタル化など広範におよぶ。実際にカスタマーサクセスとして採用されている人材の職歴は、顧客に提案ができる「営業職」、コンサルテーションやプロジェクトマネジメントに長けた「ITコンサルテーション、プロジェクトマネジメント職」、問い合わせ対応ができる「カスタマーサポート職」、コミュニケーションのデジタル化に長けた「デジタルマーケティング職」などが多い。これらいずれもは、カスタマーサクセス業務で必要な能力であり、その部分的な経験者を採用しているというわけだ。

「採用要件」の拡張イメージ

 「未経験者であっても、業務に必要とされる能力をポテンシャルと評価して採用する」、という考えは、同じく人手不足に苦しんでいるカスタマーサポート職種でも適用されている。カスタマーサポートは、顧客との対話による接客力、怒りのクレームへのストレス耐性、デジタルツールによる業務の効率化、製品への細かな知識を素早く習得できるといったスキルが必要だ。優先度はカスタマーサポート組織によって異なる。自社に適したスキルを洗い出したうえで、こうしたスキルを持った人材の、サポート以外の職種を考えてみる。

 例えば、顧客との対話による接客力は「アパレルや飲食店などの接客業」、怒りのクレームへのストレス耐性は「公務員や介護看護職」、デジタルツールによる業務の効率化は「ITのプロジェクトマネジメント」、製品の細かな知識習得は「学校や塾の教師業」といった人物像がイメージできる。企業には、こうした人材がサポート職に応募したくなるような条件設定が求められる。

 さらに生成AIが浸透しこれまでとは異なるスキルを持つ人材の採用がカスタマーサポートでも必要となってくるだろう。そうしたときにも、従来のような「経験者優遇」といった募集要件だけでは適切な人材を採用することはできない。さまざまな職種の経験者を活かせる職場にしていくことは、カスタマーサポート業界にとっても外せないポイントになる。採用要件を広げ、積極的なアプローチで魅力を訴求し、多様な人材を採用できる組織となることで、組織力も高めることができる。

図 未経験者の採用の考え方

図 未経験者の採用の考え方

※画像をクリックして拡大できます

製品知識を持つ人材を採用する

 カスタマーサクセス職種の採用事情に話を戻す。同職の未経験者採用においては、「業務内容」という観点だけでなく「製品知識」が近い人材という観点での採用が活発だ。例えば、建築業界向けのSaaSツールに建築・不動産業界の出身者、介護職向けツールに元介護事業所のリハビリ担当者、経営管理ツールに経営企画経験者、飲食店向けのオーダーシステムに飲食業経験者といったように、取り扱う製品の業務範囲に関する知識を有する人材をカスタマーサクセス部門で採用していることが多い。

 カスタマーサクセス業務においては、ツールを用いた活用支援やコンサルテーション、問い合わせ対応などが発生する。SaaS/クラウド製品を活用した業務の具体的な改善に話がおよぶことも多く、専門的な知識を持っている人材ならばその務めを果たしやすい。前職ですでに近しい領域の業務を行っており、顧客の仕事や困りごとなどを把握している人材であれば、より良いコミュニケーションができるという考えだ。

 これと同様に、事業会社のカスタマーサポート部門の採用において、「製品知識が近い人材を採用する」という考えをもっと推し進めてもよいのではないだろうか。例えば、アパレルECのカスタマーサポートであれば、「ファッション業界の経験者が活躍できる職場」であることや「アドバイス力を活かしてお客様に喜んでもらおう」など、募集要項でPRすることもできるはずだ。化粧品のカスタマーサポートにBA(ビューティアドバイザー)の経験者、家電製品であれば家電量販店の営業経験者、生命保険であれば保険営業経験者などを採用し、サポート部門としての収益貢献、経営貢献を目指すアプローチも実際にある。

 とくに、店頭での立ち仕事が多い業務については、体力面の心配や将来のキャリアビジョンが描きにくく悩んでいる人は少なくない。カスタマーサポート業務は年齢を問わず、デスクワークで働くことができる。実際に、クラウドソーシングサービスや秘書サービスなどに子供を持つ母親世代が積極的に登録し、電話業務を任されるケースも多い。

 未経験者であっても、カスタマーサポートの業務に挑戦したいと考えている人材が潜在している可能性がある。こうした「未経験者採用」については、採用難だけではなく、経営貢献や将来の部門ミッションの変革に向けて、持っておくべき考えのひとつといえる。

(2023年11月号 月刊「コールセンタージャパン」掲載)

 

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