最大のCX低下要因「オンライン本人確認」
エフォートレス化を見据えた『eKYC』の活用
オンライン上で本人確認(身元確認)を行う『eKYC:electronic Know Your Customer』の利用が広がっている。犯罪収益移転防止法などの法令指定の業種は当然ながら、指定外でも自主的に導入検討する企業が増加。顧客接点のDX化を支援するBPOベンダーもこうした動きをいち早く捉え、新たなソリューションの提供に乗り出した。
オンラインサービスを契約・利用する際に、最も手間を要するプロセスが本人確認(身元確認)だ。業種にもよるが、従来は利用者が必要書類を揃えて郵送するなどの手間を強いられ、審査が通るまでにも時間を要した。一方、企業側も受け取った書類の開封や情報入力などで多大な工数を費やし、入力ミスや書類の紛失といったリスクがあった。こうした課題を解消する仕組みとして注目されるのが、電子的本人確認『eKYC:electronic Know Your Customer』だ。オンライン上で写真付き身分証(運転免許証など)とスマートフォンなどで撮影した顔写真を使い身元を証明、サービスの利用をスムーズに開始できる。
“信頼に足る人物か”を見極め
自社サービスの健全性を高めたい
eKYCは、広義ではオンラインなどの非対面・デジタル上で行われる本人確認を指す。一方、狭義には犯罪収益移転防止法(犯収法)などの法規制で定義された本人確認手法を意味する。犯収法は、反社会的組織や詐欺集団、テロ組織などがマネーロンダリングにより資金調達する可能性のある企業・業種を規制対象に設定。例えば金融機関の口座開設や保険契約、クレジットカード契約、宝石・貴金属取扱いなど、さまざまな業種で身元確認を徹底するように義務付けている。以前はオンライン上での身元確認は認められておらず、書類のやりとりが必須だった。しかし、2018年に金融庁よりオンラインでの身元確認手法が提示され、2020年4月より改正法が施行開始されている。
eKYCを導入するのは、法令で定められた特定業種ばかりではない。近年は、オンラインサービスの普及により、法令では本人確認を定められていない幅広いサービスにおいても導入が進んでいる。eKYCサービス大手のTRUSTDOCK Verification事業部 セールスグループマネージャー兼アライアンス担当の田崎十悟氏は、「当社の場合、法令で定められたお客様は全体の3割。残りの7割はそれ以外の自主的な導入です。目的は、不正抑止やトラブル防止、自社サービスの健全性を高めたいという意向が反映されています」と説明する。
具体的には、Eコマースやベビーシッター、カーシェアリングなどの事業者だ。身元確認を行い、信頼に足る人物か確認したうえで安心安全なサービスを提供する(図)。今後、こうしたサービス事業者が増え、eKYC需要もさらに高まると予想される。
図 法令等で本人確認が定められていないサービスにおける本人確認の拡大(イメージ)
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