座談会
<これからのシニア対応>
コロナ禍で進んだ「シニアのデジタルシフト」
電話対応の強化のみでは難しいCS向上
2030年には、人口の約3割が65歳以上になる日本。数年前から指摘されているが、シニア対応は、人手不足にあえぐコールセンターにとって切実な課題だ。コロナ禍を経て、課題への対処はいかに変化しているのかを運営企業、BPOベンダー、コンサルティング企業に聞いた。
電話やチャットといった間接的な応対を行うコンタクトセンターでは、“シニア”の定義づけは難しい。一般的には電話応対を好む、デジタルに疎いといったイメージはあるが、顧客ごとにその差はある。そこで本座談会では、シニア層の顧客からの問い合わせが比較的多いNTT東日本、ハルメク・ビジネスソリューションズ、TMJに加え、シニアの特性を捉えたデジタル戦略コンサルティングを行うペンシルが参加し、シニア対応への現状や考え方を討論してもらった。
センターを運営ならびに受託運営する各社では、「年齢では一概にシニアとは線引きできない」と口をそろえる。ペンシルの倉橋氏も、「自宅にもネットワーク環境があるなど、デジタルにさほど苦手意識を持っていない方が増えています。アクティブシニアと言われる層は、購買意欲も高く、働くことで社会とつながりたい意思を持つ特性がある」と語る。その一方で、NTT東日本の篠田氏は、「お客様はご自身の感情に寄り添い、レベルにあった言葉を使ってくれる応対を求めています」。TMJの永沼氏は、「ひとつの目安として、75歳以上の後期高齢者の方への対応に気を配っている」と語るように、配慮が必要な一面があることも見受けられる。
コロナ禍では、年配の人たちのデジタル化が加速したことが分かった。NTT東日本では、「LINEを使いたい」「通販サイトを利用したい」といったデジタルに関する問い合わせが増加したと言い、LINEやZoomの使い方を学ぶ年配の顧客が多かった。ハルメク・ビジネスソリューションズでも、同社が発行する雑誌に掲載しているQRコードを利用して、LINEから問い合わせをする顧客が増えている。TMJでは、音声を使うボイスボットは、オペレータと会話をする感覚に近いため、ガスの開栓や閉栓といった簡単な手順の案内で、デジタル活用を試験運用している。
この傾向についてペンシルは、コロナの感染拡大により、会うことがかなわない孫たちと会話をしたり、写真が欲しいといった切実な思いから、デジタルツールの利用が促進したと分析。“自分には使えないのでは”と思い込んでいたデジタルツールが、「利用してみたら使えたし、便利」などの成功体験を感じている方が多いはず」と説明する。
出席者(順不同)
篠田 諭 氏
NTT東日本
ビジネス開発本部 CXビジネス部
業務DXサービス担当 担当課長
山口 泰宜 氏
ハルメク・ビジネスソリューションズ
お客様センター長
永沼 寛之 氏
TMJ
グロースマーケット事業本部 マーケット開発事業部
ソーシャルインフラ事業第1センター
センターマネージャー
倉橋 美佳 氏
ペンシル
代表取締役社長CEO