マネジメントが機能不全に陥る
「忙しすぎる現場」の弊害
Part.1 <現状と課題>
「活気がある」と勘違いしやすい
“疲弊したセンター”の特徴と対策
「ウチのセンターは皆いつも忙しく働いていて、活気があるいい職場だ」。こう考えているセンター長は多いはずだ。しかし、それは「いつも忙しい要因」をきちんと把握したうえでの評価だろうか。活気があるように見える状況が、「疲弊する一歩手前」だとすれば、忙しすぎる現場とは、組織にとって実に危険なサインといえる。経験者、識者への取材をもとに作成した診断票と、それをアンケート調査した結果を検証する。
コールセンターは、変化の激しい消費者との接点であり、セールスやマーケティング、ときには人事など、さまざまな企業活動における内外からの「受け皿」として機能する。つまり、センター組織以外の要因に伴う業務量の変化値が極めて大きい。しかも労働集約型であるため、経営からは生産性についてシビアな視線が注がれている。
言い換えれば、常に経営、関連部署、および顧客からの有形無形のプレッシャーがかかっている状態で動いており、「時間的、精神的に余裕があること」が許されにくい組織といえる。
さらに、執行役員級であることも多い管轄部門のトップ、役職者であるセンター長、正社員と非正規社員が混在しているスーパーバイザー(SV)やQA、トレーナーなどの専門職、そして圧倒的に非正規社員比率が高いオペレータまで、いわゆるレイヤーが深い。業務委託の場合はなおさらだ。結果、顧客のことを把握できていないセンター長以上は「現場のことはよくわからないけど、みんな元気に忙しく働いているな」と捉え、現場は経営の方針、マネジメントの方向性や方法などが周知されないため、「なんだかよくわからないけど、いつも忙しい」と不満が高まる──つまり、双方が理解しあわないままに疲弊しやすいという体質もあわせ持っている。
図1 「忙しすぎる現場」のチェックリスト
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Part.2 <アンケート検証>
SV/リーダーの離職を防ぐ!
リソースマネジメントの重要性
忙しすぎるセンターのあおりを最も受けるのが、SVだ。優秀なSVの離脱を防ぐためにも、適切な人員配置というセンター運営の基本に立ち返るとともに、SVの「仕事」を定義し、オペレータ育成や品質改善といった本来の業務に集中できる環境を、従来型/在宅を問わず構築すべきだ。「忙しすぎるセンター」のチェックシートへの回答結果から、「忙しすぎる現場」の状況を見る。
「忙しすぎるセンター」における最大の問題は、優秀な人材ほどそのあおりを受けてしまい、休職や退職のリスクが高まることにある。結果、彼/彼女らの戦線離脱がさらに忙しさを招き、現場が混乱。こうなると生産性はおろか、品質や顧客満足にも大きな影響をおよぼす。そうなる前に、センター長や管轄部門のトップが状態を把握し、適切な手を打つ必要がある。
そこで、コールセンターの現場の疲弊度をセルフチェックするべく、識者、経験者の知見に基づいて作成したチェックシートをアンケート化し、現役のセンター従事者に回答してもらった。
図2はその回答者属性、図3は「リソースマネジメント」に関する回答の集計結果だ。他のカテゴリよりも問題点が多く、センター運営の成熟度の低さが垣間見える結果となっている。
図2 回答者の属性(n=96)
図3 「リソースマネジメント」に関する回答(単位:人数)
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