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2020年12月号 <第2特集>

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第2特集扉

コロナ禍だからこそ再検証!
CX向上する「メール対応」

Part.1 <現状と課題>

今こそ見直すべきメール対応の品質管理
ロイヤルティを高める「5つのポイント」

メール対応は生産性や品質に関する緻密な検証もされることなく、KPIすら設定されていないケースが少なくない。しかし、メールも電話やチャットと同様、CX(顧客体験)に影響をおよぼす重要なチャネルだ。NPSとの相関分析やデータ活用によってメール対応の品質向上に取り組む3社の事例をもとに、「ロイヤルティを高めるメール対応」について検証する。

 「ノンボイスコミュニケーションへのシフトで注力するのはチャットばかり。メールは、その意義すら十分に議論されないまま、おざなりに管理されている印象があります」と、コンタクトセンターの品質管理に詳しいインサイトの大西美佳氏は警鐘を鳴らす。編集部が実施している「コールセンター実態調査」では、レスポンスタイム(返信までの時間)を設定しないセンターが174社中、38%を占め、KPIを何も設定していないセンターが実に23%もある。

 メールは、リアルタイムでやり取りする電話やチャットと違い、時間をかけて調べたうえで回答できる。こうした特性を活かし、メールだからこそロイヤルティを醸成できる応対があるはずだ。とくに、コロナ禍で電話対応を縮小せざる得ない状況では、メール窓口の価値は見直されるべきだ。

 業務改善の具体的なステップは、(1)導線の見直し、(2)オペレーションの見直し、(3)KPIの見直し、(4)品質管理の見直し、(5)CXに基づく見直しの5つに集約される。

図 ロイヤルティを高めるメール窓口を作る5つのステップ

図 ロイヤルティを高めるメール窓口を作る5つのステップ

※画像をクリックして拡大できます


Part.2 <ケーススタディ>

レスポンスタイム、ミス防止、テンプレ活用
CS向上する「基本」のアレンジ法

ホスピタリティを発揮しにくく、画一的な対応になりがちのテキスト・コミュニケーションでいかにCSやロイヤルティを高めるか。規模も業種も異なる3社は、返信時間(レスポンスタイム)の最適化、ミス防止、テンプレート活用という「基本」に、独自のアレンジを加えて実践している。KPIの設定やIT活用など、その工夫をまとめる。

 返信時間は3社ともに24時間以内を基本としている。

 アウトソーサーのTMJではさらに最適化を図るために検証を重ねた結果、ある業務に関して「4時間以内に返信するとNPSに好影響がある」「24時間を超えると返信が遅いと感じる」と、返信時間とNPSの相関関係を応対履歴から立証し、問い合わせの難易度に応じて返信時間のKPIを変えて運用している。すぐの返信が難しいと判断すれば、4時間以上かかる(24時間以内)代わりにじっくり調査を行い、画像などを交えた丁寧な説明をすることで、解決率向上にシフトする。

 ネットワークサービスなどIoT関連商品を提供するソラコムでは、ミス防止のためにITを活用して自動化を積極的に活用している。技術的な問い合わせの問題解決に十分な時間がとれるよう、オープンソースを利用して作成したツール「Textlint」で、商品名のスペルやビジネス構文の添削を自動化。企業への信頼感に影響しかねない言い回しや文章力を、ある程度ツールに任せられることで正確性だけでなく生産性も向上した。

 ヘアケア製品などの通信販売事業を展開するnijitoにおいては、7割はテンプレートの活用で対応速度を短縮しつつも、残りの3割をオペレータが“おせっかい”をして顧客に寄り添うことで満足度を高めている。最初の応対では正確な顧客像は分からないが、コンタクトがあった際は少しでも情報を引き出し、得られた情報を「お客様ノート」に蓄積する。そのほか、購入履歴や問い合わせ履歴から積極的に“おせっかい”を試みて、何が効果的なおせっかいかを検証しつつPDCAサイクルを回している。将来的には効果的なおせっかいをシナリオ型チャットボットに流し込む予定だ。

 三社三様の工夫がみられたが、共通していることは「顧客個人への寄り添い」だ。テンプレートや自動化で済むことはツールを活用し、顧客自身の悩みへの寄り添いや丁寧な説明、人ならではの暖かい言葉がけ、少なくとも宛名を指しこむなど、「機械的ではない対応」がメール対応におけるロイヤルティ向上のキーポイントと言えそうだ。


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