<コーナー解説>
店舗など、コールセンター以外を含めた接客やサービスのプロにその心構えやノウハウを聞きます。
高度1万メートルでも“快適”を提供
観察・想像・振り返り──おもてなし3ステップ
全日本空輸
客室乗務員
大濱 佳子 さん
Profile
大分県出身。高校生の頃、湯布院の英語セミナーに参加し出会った上智大学に留学中の米国人と文通を重ね、苦手な英語を克服し、大学は英語学科に入学。「英語を使って人の役に立つ仕事をしたい」と考え、客室乗務員を目指す。1987年、全日本空輸に入社。国際線や国内線の客室業務、人材育成などに携わる。ワインや温泉のソムリエ資格も持つ。趣味は発酵調味料を使った料理と温泉巡り。ベルギー国王をアテンドした経験もある。
高度1万メートルの空の上は、たとえ飛行機に乗り慣れていても非日常的な空間だ。乗客の緊張を緩和し快適に過ごせる空間を演出することも、CA(キャビンアテンダント)の重要な役割のひとつになる。
大濱佳子さんは、「ご安心いただくためにも、不快感を軽減いただくためにも、言葉を尽くすことが大事だと考えています」と強調する。
手荷物を前の座席の下に置いたり、携帯電話の電源を切るといった機内ルールについても、「なぜお願いするのか」「守らないとどうなるのか」など、言葉を丁寧に重ねることが、ストレス低減と遵守を促すことにつながるという。
サービスのプロセスはマニュアルに落とし込めても、「付加価値は、その都度の創意工夫でしか提供できない」と話す大濱さん。工夫の引き出しの源が、チームプレーだ。観察力のあるCAもいれば、誕生日や銀婚式といった旅行の目的を聞き出すことが得意なCAもいる。情報と智恵を共有し、社員が一丸となって付加価値を生みだすことを、同社では「ANA'sマジック」と呼び推奨している。
高度1万メートルの上空では何が起こるかわからない。搭乗前のブリーフィングでは、車椅子などお手伝いが必要な乗客のための行動確認など情報共有を行い、安全と快適の確保を図る。最高責任者として搭乗することが多い大濱さんは、「クルーの力を100%発揮すれば、どんなことも乗り切れる自信があります」と言い切る。チームワークの強さと、日ごろの訓練の積み重ねがこの自信の源だ。