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【トレンド】ビジュアルIVR

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Trend

[トレンド]ビジュアルIVR

自己解決、チャット誘導──
“スマホの顧客体験”を向上する

電話、Webサイトの検索、チャット──。顧客とのコミュニケーション戦略を考えるうえで、スマートフォンの存在は絶対に無視できない。そこで、ガイダンスとフローをビジュアル化したビジュアルIVRを提案するベンダーが増えている。主要な製品・サービスを検証する。

 コールセンターに電話した顧客の不満は、オペレータの応対スキルよりもIVR操作の手間や待ち時間の長さ、つながらないことに起因しているケースが多数を占める(「コールセンター白書2018」より)。こうした不満の解消策として、Web-FAQの充実による自己解決促進やWebチャット、ソーシャルメディアによる対応を拡充し呼量削減を図るセンターもあるが、その際の最大の課題が「導線設計」だ。「ビジュアルIVR」は、これを解消する手段として注目されつつある。

 同ツールは、スマートフォン利用者を対象に、音声自動応答システム(IVR)の音声ガイダンスをビジュアル化するもの。Webブラウザまたは企業アプリにIVRメニューを表示し、適切なオペレータに接続したり、FAQコンテンツに誘導し自己解決を促す。このほか、メール、チャット、チャットボットといったマルチチャネルへの導線としての役割も期待されている。

目的に応じてアクセス方式を選択

 ビジュアルIVRの主な提供方法は、「(1)電話→URL送信型」「(2)電話→アプリ起動型」「(3)アプリ表示型」の3つに分かれる(図1)。

図1 ビジュアルIVRのアクセス方式の概要

図1 ビジュアルIVRのアクセス方式の概要

 (1)はIVRシステムと連携し、電話をかけた顧客に対してビジュアルIVRの利用を案内。利用を希望した顧客にSMSでビジュアルIVRのURLを送信する。

 (2)は、スマートフォンに専用のアプリがインストールされていることを前提とした方式だ。指定の電話番号への発信操作をトリガーにアプリが起動し、ビジュアルIVRのWebコンテンツにアクセス、メニューを表示する。実際には電話発信していないため、顧客側に通信費はかからない。

 (3)のアプリ表示型は、各企業が提供するアプリケーションへの機能埋め込みにより、メニューを表示し、各種情報の取得や各チャネルへの遷移を行う。

 (1)および(2)のWebコンテンツを表示する方法は、既存コンテンツを活用できるので開発工数が比較的少なく、コストを抑えられる。アプリ表示方式は、OS各種に合わせた開発が必要だが、キャンペーン情報のプッシュ通知機能を持たせるなど柔軟に設計できるメリットがある。

 選定の際は、「管理画面の有無」も確認すべきだ。緊急対応が発生する業務の場合は、管理画面で簡単にメニュー変更できるサービスが適している。キャンペーン実施に伴うメニュー変更など、予測可能なものについては、あらかじめベンダーに依頼してテンプレートを用意しても対応できる。

IVRの階層ごとに「よくある質問」提示

 NTTアドバンステクノロジが提供する「AT VisualIVRソリューション」は、NTTグループ製品とのインテグレーションによる顧客体験向上を訴求する。

 具体例は、同社のFAQソリューション「MatchWeb」との連携だ。ビジュアルIVRメニューの階層ごとに閲覧数上位のQ&Aコンテンツを表示できる。オペレータに接続する前に、より多くの自己解決を促す機能だ。また、NTTコミュニケーションズが提供する「フリーダイヤルサービス」が標準で提供しているSMS送信機能を使ったビジュアルIVRメニューへの誘導も推奨している(図2)。

 IVRのメニュー画面の開発および変更・追加は、同社が依頼を受けて行う。機能要件により異なるが、初期費用は数百万円〜、月額は数十万円〜。

図2 「AT VisualIVRソリューション」のサービスイメージ

図2 「AT VisualIVRソリューション」のサービスイメージ

選択型メニューで問題を絞り込み

 NTTネオメイトが提供するビジュアルIVRソリューションは、問題の原因を選択形式で絞り込むメニュー構成が特徴だ。

 図3は、インターネットのテクニカルサポートの画面例だ。顧客のリテラシーに左右されがちな業務だが、解決すべき問題、つまり質問を明確に認識していない状態で問い合わせてきた顧客に対しても、適切な回答を提示できる。万が一、回答にたどり着けずにオペレータに接続しても、顧客が選択した項目の履歴は保持されるため、迅速な解決が可能だ。内容確認などで発生する保留を抑制でき、通話時間の短縮も期待できる。また、音声通話をしながら、ファイルやリンク、画像などを共有できることも強みだ。視覚的表現で説明を補いながら、きめ細やかな対応を実現する。

 オンプレミスシステムで提供。価格は、要件に応じて個別見積り。

図3 ビジュアルIVRサービスの流れ

図3 ビジュアルIVRサービスの流れ

CRMシステムと連携 生産性と顧客体験を一挙に向上

 富士通が提供するCRMモバイルソリューション「FUJITSU Business Application CRMate モバイル(以下CRMate モバイル)」は、顧客の属性や過去の問い合わせ対応履歴などを蓄積したCRMデータベースと連携、顧客に対する提案の最適化や対応時間の短縮とともに、オペレータ業務を支援する(図4)。具体的には、顧客がスマートフォンから電話をする際に、問い合わせ内容や関連する写真、位置情報などの付帯情報を同時にコンタクトセンターへ送信できる。一方、オペレータは電話を受けた際に、これらの情報を操作するCRMシステムの画面で確認できるため、待ち時間とAHTの短縮が見込める。ビジー状態や営業時間外で応答できなかったコールと付帯情報は、クラウド上に着信履歴として残る。問題解決に必要な情報を準備したうえでコールバックに臨める。

図4 「CRMate モバイル」の利用イメージ

図4 「CRMate モバイル」の利用イメージ

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 2018年10月、三井住友海上火災保険がCRMate モバイルのビジュアルIVR技術を採用し、オフィシャルHPの「三井住友海上 お客さまデスク」でビジュアルIVRサービスの提供を開始した。Web上に記載された電話番号をタップすると、スマートフォン画面に「契約内容更新」や「保険料控除」といったIVRメニューが表示されるシンプルな仕組みだ。導入により、電話をかけてからオペレータに接続するまでの時間は、約1分から10秒程度に短縮できる見込みという。

 CRMate モバイルは、Webコンテンツに機能を埋め込める「Web版」と、専用のモバイルアプリを提供する「アプリ版」の2つの提供形態から選択できる。

“IOR”を提唱 多様なチャネル接続を提案

 モバイルセレクトが提供する「モバイルセレクト」は、一部のスマートフォンにプリインストールされたアプリケーションを利用してメニュー画面に誘導する機能を提供する。現在、対応端末は1600万台。未対応端末については、企業アプリに組み込んでダウンロードする。

 同ソリューションは、CX向上と呼量削減・チャネル分散を支援する。契約した企業のコールセンターの電話番号とURLをアプリ内で保持。顧客が従来通りにスマートフォンの電話機能を使ってコールセンター電話番号にかけると、アプリが起動し、紐づけられたURLに誘導、サービスメニューを表示する仕組みだ。

 同社は、以前からビジュアルIVRをオムニチャネルのコミュニケーション・ハブとして考えており、「IOR(Interactive Omni-channel Response)」と位置付けている。ビジュアルIVRの流入経路となるアクセス方式、遷移先であるチャネルともに様々な連携を提案中だ。例えば、顧客情報や問い合わせ内容によって動画や画像などのコンテンツを分けたり、適切なチャネルを動的に提示することを目指している(図5)。

 価格は、利用に応じた従量課金制。

図5 モバイルセレクトが実現を目指す「カスタマードア」

図5 モバイルセレクトが実現を目指す「カスタマードア」

オペレーション、導線設計 センター運営ノウハウも提供

 アウトソーサー各社もビジュアルIVRを提案している。接続するチャネルのオペレーション/マネジメントもあわせて提供できるのが強みだ。

 トランスコスモスが提供する「Contact-Link for V-IVR」は、スマホから電話した顧客に対し、SMSでIVRメニュー画面のURLを送って誘導するだけでなく、Webサイトからのリンクも可能だ。必要に応じて、Webフォーム(メール)やチャット、LINEと言ったコンタクト機能を付加できる。

 最大の特徴は、自社のコールセンター運営を通じて得たニーズを反映した機能をオプションとして提供できること。例えば、「電話の待ち時間」のメニュー表示も可能だ(下画像)。これは、コンタクトセンターシステムとの連携により、リアルタイム表示が可能。また、任意の時間を入力することもできる。

 利用料金は、メニュー表示のみの場合、初期費用130万円〜。月額8万円〜。機能要件により加算される。

トランスコスモスの「Contact-Link for V-IVR」

トランスコスモスの「Contact-Link for V-IVR」。画面左は、サポートチャネル画面トップ。同右は電話お問い合わせチャネル選択後の最終画面

 KDDIエボルバは、オムニチャネルソリューション「for touching」の1つとして、WebベースのビジュアルIVR「VisualMenu」を提供している(図6)。メニュー表示の他、電話の混雑状況表示やコールバック予約の機能を標準実装している。現場での運用しやすさと効率を重視した管理画面では、必要なメニューを複数パターンから選択でき、アイコンやリンク設計はボタン操作で完結する。1アカウント内で複数のテンプレートが保持でき、表示の即時切替も可能だ。

図6 「for touching」シリーズの概要

図6 「for touching」シリーズの概要

 また、コンタクトセンター運営の知見をもとにしたVisualMenuの業務・導線設計や効果検証に加え、SMSやAIチャットボット、有人対応などと組合せた顧客接点強化につながるスマートフォン経由のコミュニケーションサービスをワンストップで利用できる。

 例えば、スマートフォン経由のサポートを推進するセブン銀行は、VisualMenuを活用した日本語を含む9言語対応のビジュアルIVRサービスで、国籍を問わない多くの顧客に利便性を提供している。

 顧客との関係強化において、スマートフォン経由のコミュニケーション強化は絶対に欠かせない。言い換えれば、「スマートフォンの特性を踏まえたカスタマーサービスの設計」こそが顧客体験向上の近道となる。

この記事は月刊「コールセンタージャパン」2018年12月号に掲載されました。
掲載内容は発行当時のもので、変更されている場合がありますことをご了承ください。


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