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CPCはセンター経営の「通信簿」

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コールセンターのKPIは、「品質」「生産性」「収益性」の3種類に分類するのが一般的だ。しかし、「顧客に対して重要なKPIが応答率」「TSR(オペレータ)に対して重要なKPIが稼働率」「経営(アウトソーサーの場合はクライアント)に対して重要なKPIがCPC」と、ステークホルダー別に分けることもできる(下図)。


■用途別に、KPIを区分け
 また、KPIを用途別に分類しておくと、どのKPIが何の目的で管理しているのか目的がはっきりする。下図では、「顧客指標」「勤怠指標」「TSR業績指標」「人員予測指標」「システム指標」「経営指標」と、大きく6つに分類した例を挙げる。
 「顧客指標」とは応答率に代表される指標であり、「勤怠指標」はTSRの欠勤や遅刻早退などを含む。「TSR業績指標」は処理時間や応答数、モニタリングスコアなどの評価指標で、「人員予測指標」にはサービスレベル目標値や処理時間、1時間あたりのコール数などがある。「システム指標」は、話中の呼損率から必要回線数などを算出するという指標を指す。「経営指標」は、インバウンドであればCPC(コスト・パー・コール:1コールにかかるコスト)やCPM(コスト・パー・ミニッツ:1分あたりのコスト)、アウトバウンドであればCPA(コスト・パー・アクイジション:1件獲得するのにかかるコスト)などを指す。
 こうした分類によって、例えばTSRの業績を管理するSVはTSR業績指標を定期的にチェックし、人事考課を行うセンター長は勤怠指標を見るといったように、担当者別に何を意識すればいいのかがわかりやすくなる



■CPCは本社経費の影響も受ける
 CPCは、コールセンター管理者から経営層に向けてアピールできる重要なKPIだ。CPCを報告せずに、コールセンターの経営貢献を訴求するのは難しい。しかし、CPCを定期的に集計しているコールセンターは2割に満たないと実感している。
 下図はコールセンターにおけるCPCの推移をシミュレーションしたグラフだ。このコールセンターでは2000年当時、正社員が中心となって受け付けていたため、CPCは1500円以上となっていた。その後、受け付けを派遣・契約社員にシフトし人件費比率が減少すると、CPCは1300円まで低減。さらに、マルチスキル化や業務効率化により1200円まで下がった。本社ビルの移転によって本社配賦額が減少するとCPCはさらに低減した。このようにコールセンターのCPCはセンター内の運営努力だけでなく、本社経費の影響も受けるため、どの要因で増減したのかを見極めることが必要だ。
 同センターは、2006年を境に製品・サービスの多機能化によって通話・後処理時間が増え、それに伴いCPCは上昇した。さらに、本社が今度は家賃の高いビルに移転したことで本社配賦額が増加し、さらに上昇。センターの経費効率化を目的に、首都圏から人件費の安い地方に移転するとCPCが大幅に低減した(センター移転のイニシャルコストはCPCに含めていない)。
 このように、CPCは、業務効率化や人件費比率の減少といった施策で減少したり、処理時間や人件費・その他経費比率の増加によって上昇することもある。CPCは、センターの運営施策・経営状況を映し出す“鏡”のような存在だといわれるゆえんだ。



■コスト増の理由を明確にする
 、CPCは月単位のショートスパンで見るのではなく、年度単位のロングスパンで検証することが望ましい。
 経営からするとCPCは、センター経営の“通信簿”のようなKPIともいえるが、CPCをしっかり読み解ける経営層がいるとは限らない。場合によっては、CPCを共有することが、“あだ”となることもある。例えば、月単位でCPCを報告してしまうと、繁忙期前のTSR採用・教育期間は処理件数に1件も貢献していないが人件費は計上されるため、CPCが跳ね上がることになる。それを見た経営層が誤解し、採用ストップの命令が下るといった弊害も起こり得る。CPCは、センター運営において非常に重要なKPIであるが、活用方法・説明を間違えると“足かせ”にもなり得るKPIでもあるということを肝に銘じたい。増加・減少を経営に報告する際は、その背景や理由、次の打ち手を明確に説明することが重要だ。



(連載「新任マネージャーのためのコールセンター運営の基礎知識」 月刊コールセンタージャパン2017年2月号掲載

著者:五月女 尚
この著者の講座は、「コールセンター運営の基本知識とマネジメント入門講座」「 実践!KPIマネジメント・課題解決講座」です。

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