情報の非対称性を解消して提案しよう!
ISラボ 代表 渡部弘毅
最近、歯の神経を抜く治療をした、わたちゃんです。これで、宴席の前にロキソニンにお世話になることもなく、美味しいヒエヒエのビールを飲むことができるようになりました。ビビらないでもっと早く治療すれば良かったです。
「情報の非対称性」とは、市場で取り引きをする人たちが保有する情報に差があるときの、不均等な情報構造のことです。一般的には、「売り手」と「買い手」の間で、「売り手」のみが専門知識と情報を持っていて、「買い手」はそれを知らないというような状況です。情報や知識に差が出てしまうこの状態は一昔前の中古自動車の市場などによく見られました。結果的に「品質が悪く価格が低い車だけが出回る」状態になり、経済学では「市場の失敗が生じている」と論じられていました。
このような事例は、経済学的に議論をしなくても、通常のお客様対応でもよく見られます。情報の非対称性を解消しないままお客様対応をし続け、お客様満足度を下げてしまうようなケースは少なくありません。例えば、テクニカルヘルプデスクのオペレータは、毎日、技術情報や自社の製品情報に関わっているため、膨大なQ&A情報と専門知識を持っています。毎日対応していると、次第に顧客も自分と同等の知識を持っているかのような錯覚を抱いて対応してしまうケースがあります。専門知識と情報を身につけることは、とても重要ですが、お客様の目線に立って分かりやすく説明することを忘れるわけにはいきません。
マッサージサービスのような対面でのプロフェッショナル型サービスも同様です。施術力が満足度を高める重要な要素ではありますが、施術前には自社がどのように優れた施術を実施するのか分かりやすく伝えることや、施術後にはその状態を伝え、今後の施術についてどのようにしていくべきなのか、きちんと分かりやすく説明することが、満足度に大きな影響を与えます。対応する顧客数を重視して、施術前後の説明プロセスをおろそかにすると、お客様は価格だけに注目してしまい、満足度は低下。値下げ競争という負のスパイラルに陥ってしまう可能性もあります。
情報の非対称性を解消する努力をすることが、満足度を高め、結果、付加価値の高いサービスになる一要因であることを認識することが重要です。
ということで、僕の通っている歯医者さんが治療に対してしっかり説明してくれることを期待していたのですが、あまり説明が無いのです。処置後はすぐに他の患者のところに行ってしまいました。最新の設備と若手のテキパキ系の医師を多くかかえて治療面では安心しているのですが、話のネタに状況を深く知りたいおやじの対応もして欲しいものです。コンビニの店舗数より多いと言われている歯医者さんの生き残りもこのあたりが鍵を握っているのかもしれません。
図 情報の非対称性による「市場の失敗」