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本誌記事 ケーススタディ freee

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Casestudy ケーススタディ

freee

カスタマーサクセス業務を委託する!
パートナー選定と品質検証プロセスを確立

日本におけるカスタマーサクセスはまだ歴史が浅く、経験者は少ない。売り上げ向上とともに組織が拡大する一方、採用難による人手不足もあって、目前の業務に追われるサクセス部門は少なくない。freeeは約3年前に「カスタマーサクセスのアウトソーシング」に着手。試行錯誤を重ね、築き上げてきた委託先選定の基準やKPIマネジメントについてカスタマーサクセス本部マネージャーの今井紗代氏に聞いた。

今井紗代氏
freee カスタマーサクセス本部 ハイタッチサクセス部 会計初年度サクセスチーム マネージャー 今井紗代氏

 freeeがカスタマーサクセス業務のアウトソーシングを開始して、およそ3年が経過した。アウトソーシングをはじめた背景について、カスタマーサクセス本部 ハイタッチサクセス部 会計初年度サクセスチーム マネージャーの今井紗代氏は「当時、事業計画通りプロダクト利用顧客が増加したと仮定した場合のカスタマーサクセスの要員数を算出すると、数年間で100名規模の採用が必要という試算になりました」と説明する。

委託先としたパートナーは
会計士や税理士、システムコンサル

 会計システムは、顧客が利用を開始するまでの負荷の重いツールのひとつだ。通常業務をこなしながら、従来、使っていたシステムからのデータ移行とシステム操作方法の理解をしなければならない。そのためオンボーディング時の支援が重要で、うまくいかないと離反するケースもあり、ハイタッチ支援は大きなカギを握る。対応人材には、顧客と対等にコミュニケーションし、的確なフォローをできる会計知識、バックオフィス業務知識、システム関係の専門知識などが必要で、採用の難易度はかなり高い。

 カスタマーサクセスだけでなく、コールセンターなどの顧客接点業務の採用では「コミュニケーション力を重視して専門知識を後で身につける」という企業が多いが、同社は逆に、「専門知識を持つ外部の“専門家”に依頼する」という手法を選択した。対象としたのは、全国の会計士・税理士・社労士などバックオフィスのスペシャリスト、そしてシステム導入のコンサルティング会社など約20社とパートナーとして提携。顧客を獲得後のオンボーディングやサポート業務の委託先として、それらパートナーを「CSP(Customer Success Partner)」と呼称、組織化した。

 CSPに求める要素、委託先を選定する際の基準がだ。専門家であるだけに業務およびプロダクトの知識は問題ないが、プロジェクトマネジメントスキルやコミュニケーション力も必要条件としている。さらに受託開始時期の担当者の人数や安定的に稼働枠を確保できるか、今後の拡大意欲なども検討要件としている。専門事業を行う士業法人には厳しい条件のように見えるが、今井氏は「税理士法人がグループ企業のなかにコンサルティング会社を立ち上げているケースや、会計業務をはじめ、システム導入を含む包括的なDXまで業務拡大する企業も増えています。ビジョンや方向性が合致すればマッチングする可能性が高いことを実感しています」と話す。

図 新規CSPに求める要素

図 新規CSPに求める要素

※画像をクリックして拡大できます

パートナー向け研修コンテンツを提供
対応開始前のチェックも実施

 対応スキル向上と維持のためにCSPには研修用のコンテンツを提供している。内容はオンライン学習、ロールプレイング、OJT向けなど。業務委託のため、指揮命令は不可能だが、品質を担保するために委託先にはこうしたトレーニングの実施を依頼。スキル認定は厳密に実施している。各CSPとfreee担当者では、お客様との支援プロジェクトについて情報共有を徹底しており、定期ミーティングでの進捗や品質の確認を行い維持、向上を図っている。またプロダクトのアップデートなどについても情報共有を行い最新の情報に基づく支援を可能としている。

 また、委託先の監査の一環として5段階の認定制度を設けている。認定ランクを決める要素は「顧客対応の自走力」「提供価値」の2点。提供価値とは支援完了時のプロダクト利用状況で一定以上の品質を維持する、あるいは一定規模以上の受け入れ枠を毎月、安定的に提供するなどが挙げられる。その結果として報酬、つまりCSPにとっての売り上げが上がるように設計し、CSPが認定ランクを上げたいと思える仕組みを目指している。ランキング制度を設定したことで全体の品質が向上したと同時に、CSPが自走した顧客対応を行うことで対応のスピード感があがり、顧客満足度の向上につながっている。

 CSPに委託している業務は、(1)顧客の業務の洗い出し・システム要件定義の助言、(2)操作方法のレクチャー・Q&A回答、(3)本格運用前の残課題・疑問点の解消などがある。

 KPI(ヘルススコア)は、X日以内の稼働率を設定。オンボーディングプロセスを6段階に区切り、「X日までにYのフェーズまでを完了」として進捗管理している。定性的な指標としては、顧客にアンケートで支援の内容や不安ごと、評価などをヒアリングしている。

 「2019年に取り組みをはじめた当初は、研修コンテンツの作成や制度の整備、パートナーが受け持つ顧客数からKPI管理まであらゆることが試行錯誤でしたが、約3年が経過し、品質も安定するようになりました。ただ、“お客様のサクセス”と“パートナーのサクセス”についてはまだまだ改善の余地があります。今後は、パートナーごとの強みや特性を活かした顧客とのマッチングを行い、より深くユーザーニーズに合致する支援を実現する方針」(今井氏)

(2023年9月号 月刊「コールセンタージャパン」掲載)

 

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