澁谷 毅 氏
執行役員
AIプラットフォーム部門長
<コーナー解説>
ITソリューションベンダーのキーマンに製品・販売戦略を聞きます。
トゥモロー・ネット
チャット/ボイスボットのCXを高める!
「マルチモード」ならではの“会話力”を訴求
企業PROFILE
所在地:東京都品川区東品川3-28-25 プロロジスアーバン東京品川1 3階
代表者:李 昌珍代表取締役社長
設立:2005年2月
資本金:3000万円
従業員数:68人(2023年6月30日現在)
URL:www.tomorrow-net.co.jp/
採用難とカスタマーエクスペリエンス(CX)向上という、コンタクトセンターの「二大課題」を同時に解決する手段として、急速に導入が進んだチャットボットとボイスボット。しかし、実際に目に見えるレベルでCX向上や呼量削減できた事例は数少ない。チャットボットとボイスボットを同一UIで利用できるAIサービス『CAT.AI(キャットエーアイ)』を提供するトゥモロー・ネットが実施した調査によると、ボットを利用したユーザーのうち、問題解決できたのは49%。回答に満足した割合は、チャットボットは42%、ボイスボットは47%と、半数以上が解決できず、回答に不満を抱いていることがわかった。
執行役員 AIプラットフォーム部門長の澁谷 毅氏は、「多くのボットは、“顧客にどのような体験を提供するのか”という視点が欠如しています」と指摘する。例えば、ボイスボットでメモの用意が必要な手続きだったとする。オペレータであれば、「メモをご用意ください」「ご準備はよろしいでしょうか」のように、相手の状況を確認して待つ場面だが、ほとんどのボットはそのようなことはしない。手続きを進めることに終始して、顧客側に同じことを聞き返す手間を強いているのが現実だ。
「ボットが十分に機能するには、“人の感覚”を付与するシナリオ設計が不可欠です」(澁谷氏)。同社は、CAT.AIのシナリオ設計に特化した「CXデザインチーム」を組成。入念な企業調査を基に「どのようなCXを提供したいのか」を明確化し、設計している。
この設計において、CAT.AIの強みであるボットの“CXマルチモード”が活きている。澁谷氏は「エフォートレスを追求するうえで、1つの会話のなかでテキスト入力と発話入力を切り替えられることは大きな強み」と強調する。ボイスボットの利用で課題に挙がる音声認識精度の問題も、認識できなかった場合はテキスト入力に切り替えることで、離脱を抑止可能だ。
チャットボット、ボイスボット単体での適用範囲は、簡単な用件に限られるため、全体の業務の「2〜3割」が限界とされている。CXデザインとCXマルチモードによって、複雑な用件への自動化拡大が期待できそうだ。
同社は7月、CAT.AIの提供品質の根幹を担うコンタクトセンター「ICX(Innovative Customer eXperience)センター」を立ち上げた。主業務はCAT.AIの対話ログ解析および学習用教師データの作成、品質管理だ。「日次で改善サイクルのPDCAを回すことで、早期の品質向上が可能です」(澁谷氏)。1カ月で完了率を65%から93%に引き上げた実績もあるという。