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本誌記事 連載 カスタマーサクセスAtoZ 第6回

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Trend 連載

「面の広さと時間軸」の違いに見る
サクセス/サポートが相互に学ぶKPI

カスタマーサポートとカスタマーサクセスは、顧客とコミュニケーションをするスパンや対応時間に大きな違いがある。双方が参考にし、学び合うことでよりよいCX向上は実現できる。とくにコールセンターのマネジメントには経営貢献の可視化に悩む人が少なくない。今回は業務内容や顧客接点の対応期間から、双方が取り入れることのできる運用ポイントを探る。

藤島 誓也
Writer
openpage 代表取締役
藤島 誓也
東大ベンチャー、大手出版社と共同でコンテンツマーケティング製品を推進。その後、ビズリーチにてCSM(カスタマーサクセスマネジメント)チームを立ち上げる。2018年、SaaSスタートアップから大手SI企業まで米国流のデジタルカスタマーサクセスの導入を支援するopenpageを設立、伊藤忠テクノロジーベンチャーズより資金調達する。note、Twitter、YouTubeでカスタマーサクセスの最先端情報を発信している。

 カスタマーサポートは、業種にもよるが、トラブルシューティングがコミュニケーションの中心となっていることが多い。顧客からの問い合わせパターン(コンタクトリーズン)が多様なため、あらゆる問い合わせに応えられる「面の広い対応」への備えが求められる。例えば、製品の機能については、どの機能に対する質問であっても回答できるよう準備する。その他、価格メニュー・契約プラン・製品不具合などの対応すべきコンタクトリーズンの幅が広い。しかも、原則として理不尽な要求以外に「応えられない」という回答が許されない。電話やメールが主な接点で、顧客と接する時間軸は数分〜10分程度のことが多く、短時間での問題解決に特化しており、接客のマナーや機転も必要だ。

 一方、カスタマーサクセスの対応内容は、カスタマーサポートほど広くはなく、製品機能の解説が中心だ。広さ以上に「深さ」が必要だ。例えば同じ製品機能でも、すべての機能をあまねく説明するより、重要な機能に特化していかに活用するか、どのような手順で使うか、どうすれば他の顧客は上手く使いこなせたのかなど、深掘りして説明する。また、顧客とのコミュニケーションの時間軸は6〜12カ月ほどにおよぶこともある。既契約の顧客と長期間、伴走しながら契約製品の利用成功に導く。製品の活用成功イメージから逆算して、起こりうることを想定し、コミュニケーションを設計する。

 このように、サポートとサクセスはコミュニケーションの内容や期間で対比すると理解しやすい。それぞれ、学ぶことができる点を解説する。

「先回り」と「IT強化」がポイント

 カスタマーサポートがカスタマーサクセスを参考にできる点としては、長期のコミュニケーションを前提とした会話術が挙げられる。カスタマーサクセスは、長期の関係構築を想定し、顧客がトラブルに遭遇する前に接点を持つ、「先回り」が肝要だ。例えば、製品を利用する際によくある、つまずくポイントや、上手く使いこなす方法を事前に伝える。顧客が快く製品を利活用できる情報を伝えることが「カスタマーサクセス的」といえる。

 一方、カスタマーサクセスは、カスタマーサポートから「幅広い対応内容について短期間で回答する」ための準備をする点は参考になる。カスタマーサポートは、トークスクリプトに加え、ヘルプサイトやチャットボットなど、即時解決を目指す対応を整えている。具体的には、顧客から質問されうる項目を徹底的に洗い出し、質問をパターン化し、FAQに落とし込む。ヘルプサイトにも顧客が自己解決できるよう、検索時のヒット率を高めている。カスタマーサクセスはカスタマーサポートに比べ、まだドキュメント化やデジタル対応のスピードが遅れている。2023年はカスタマーサポートを倣い、カスタマーサクセスもデジタル化し、コンテンツ充足による自己解決の強化が加速すると思われる。

「再問い合わせ率」採用の可能性

 コミュニケーションとはまた別に、KPIとしても双方、参考になるものは数多い。まずは、カスタマーサポートで採用できるカスタマーサクセス的なKPIになり得るのが「再問い合わせ率の減少」だ。

 目の前のトラブルシューティングだけでなく、今後起こり得る問題に先回りして顧客に伝える。カスタマーサポートの時間軸では、カスタマーサクセスのように継続的に顧客に寄り添い続けるのは難しい。だが、顧客と自社の提供製品/サービスの接点自体を長く保つメリットは大きい。そのため、短い接点時間の中でも「再問い合わせ率」を意識して、目の前の問い合わせ以外にも顧客に対して有益な情報共有をすることは価値がある。「問い合わせがない→再度の問い合わせがない→製品を活用している→製品に満足しており上手くいっている(カスタマーサクセス)」と、後ろにいくほど顧客にとっては望ましい。問い合わせを減らすアプローチに加え、製品活用法も案内できると理想的だ。

 一方、カスタマーサクセスがカスタマーサポートに学ぶKPIとしては、「デジタルコンテンツの体験時間」がある。現状、カスタマーサクセスに従事するのはSaaS企業の従業員が多いが、SaaS業界の企業価値は目下、低下傾向にある。すなわち、市場から調達できる資金が小さく、カスタマーサクセスに潤沢な人件費を割けなくなりつつあるのだ。結果的にデジタルコミュニケーションを加速させる必要があり、カスタマーサクセスもデジタルコンテンツを拡充する動きに着手しなければならない。コミュニケーションに人員を割かないということは、顧客に対し有人で行っていた案内時間と同じ時間をデジタルで体験してもらう必要がある。セルフサービスで問題解決、製品活動ができる状態にすることになる。

 顧客のセルフサーブを積極的にするためには、テックタッチのためのコンテンツ作成を増やさなければならない。openpageでは、デジタルカスタマーサクセスを実現するためのプラットフォームの提供や、コンテンツ制作サポートを行っているが、最近、顧客のテックタッチ意欲が高まっている。編集や資料作成の素養のある人がカスタマーサクセスのデジタルコンテンツ作成を開始している。カスタマーサポートは、顧客が自ら検索してセルフで問題解決が出来るようにコンテンツを徹底的に用意するが、カスタマーサクセスもそこから学び、セルフで製品活用、成功できるという状態を作っていくべきだろう。

図 カスタマーサクセスを参考にする
カスタマーサポートの新たなKPIとは

図 カスタマーサクセスを参考にするカスタマーサポートの新たなKPIとは

 

 

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