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2022年11月号 <インタビュー>

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水野 敬志 氏

パンデミックの病床不足を救った
救急/在宅医療の「DX」と「フル在宅センター」

ファストドクター
代表取締役/CEO
水野 敬志 氏

新型コロナ禍で露呈した従来型医療機関のデジタル化の遅れ。それをカバーし、多くの患者を救った救急医療機関が、ファストドクターだ。出動可能な医師と患者を、症状や住所などをもとにマッチング。「テクノロジーを駆使したスマートな医療体験の提供」を支えた要素のひとつが、約300名規模の「在宅コンタクトセンター」だ。

Profile

水野 敬志 氏(Takashi Mizuno)

ファストドクター  代表取締役/CEO

京都大学大学院農学研究科修了後、外資系戦略コンサルティングファーム、楽天にて戦略および組織マネジメントの経験を積む。2017年よりファストドクターを含む複数ベンチャーを支援、 2018年からファストドクターの代表取締役に就任

──コロナ禍では、大きな社会貢献はもちろん、ビジネス的にも急成長を遂げられたと思います。

水野 (コロナ禍以前と比較すると)売上げは約6倍、人員は7倍規模に達しています。うち、コールセンターは約300名が在籍、すべて在宅環境です。

 ドクター(医師)は、全国で約1500名で、通常は病院などで勤務されており、あらかじめ稼働可能な時間を登録いただく体制です。ホームページやアプリにはエリアごとに出動できる医師の人数をリアルタイムで表示する仕組みを構築しました。

──この2年半で最も要請が多かったのはいつ頃ですか。

水野 今年の8月です。約10万件の要請がありました。ただ、最も危機感が強かったのは第5波、デルタ株の流行のときでした。オミクロン株以降は、件数は多いものの生命の危機という方は比較的、少なかったのですが、あのときは本当に厳しかった。あの経験は、件数が増えた6波、7波にも活きたと感じています。

医療の「2040年問題」に備える
“箱物”を持たない医療機関

──ファストドクターが設立された背景を教えてください。

水野 創業は2016年です。医師である代表の菊池が、「誰もが必要なときに必要な医療を」という思いを実現するために創業しました。現在は365日体制で、1日100〜150名の医師が出動できる体制を備えています。

 設立の背景には、短期的にも長期的にも救急医療が行き詰まっているという大きな社会課題があります。救急車を呼ばれる患者さんは、症状の軽重があります。実際、多くは軽症者なんですが、そこにリソースを割いた結果、本当に緊急性の高い、手術が必要な重症の患者さんが後回しにされてしまう事例が跡を絶ちません。さらに救急車は24時間体制で要請に応じる必要があるため、受け入れる病院側の負荷も大きい。このままでは、誰もハッピーになれません。

──コロナ禍においても、医療機関の負荷の大きさは指摘されていましたが、コロナ以前の課題だったのですね。

水野 しかも、高齢化が進んでいるのは医療従事者も同様です。ある統計では、開業医の平均年齢は60歳を超えています。そうしたなかで24時間365日、正月も関係なく出動する環境が必要というのは、あまりにも現実的ではない。地域のかかりつけ機能をバックアップするためにも、ファストドクターのような存在は絶対に必要です。

──長期的な課題については。

水野 いわゆる「2040年問題」です。日本の医療行政は、コロナ禍以前からベッド数を減らす「集約」を進めており、その方針は今も変わっていません。しかし、人口動態がこのまま変化しなければ、2040年に死亡者数がピークを迎え、看取られる場所のない方は50万人に達します。これが2040年問題です。しかも、以降は人口の減少率が加速するため、大規模な病院など箱物はメンテナンスする人材もいなくなるし、コストもかかります。我々のような「箱物を持たない医療機関」の存在意義は、さらに高まると感じています。

(聞き手・矢島竜児)
続きは本誌をご覧ください

 

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