サービス品質と感動体験、落胆体験
ISラボ 代表 渡部弘毅
コロナ禍の暮らしで外出自粛とリモートワークが続き、人恋しくなってきている、わたちゃんです。久しぶりに居酒屋に行って、店員が笑顔でホッピーを持ってきてくれただけで、感動してしまいました。
カスタマーエクスペリエンスの観点では、顧客が企業や商品との接点でどのようなポジティブ体験やネガティブ体験をしているかを把握することが重要です。そして、これらの体験を定量化して比べてみると、ポジティブ体験の中には、顧客の心に大きく響きロイヤルティに好影響をおよぼす「感動体験」があり、同様にネガティブ体験の中には悪影響をおよぼす「落胆体験」があることが分かりました。
たとえば百貨店の入館シーンでは、「高齢者や足の不自由な方へも丁寧に案内があった」という体験が感動体験であり、「売場の名称がわかりにくかった」という体験が落胆体験です。また、売場での接客シーンでは、「子供や同伴者への気配りが感じられた」という感動体験があり、「販売員の商品やトレンドに関する知識が少ないと感じた」という落胆体験があります。
これはコンタクトセンターでも言えます。小売り業の問い合わせシーンでは、「自店で取扱いがない商品も親身に調べてくれた」という体験が感動体験であり、「電話での応対マナーが悪かった」という体験が落胆体験となります。また、クラウドサービスのテクニカルサポートシーンでは、「問合せ内容がサポート担当者間で共有されていた」が感動体験であり、「担当者が冷たいと感じた」が落胆体験です。
このようなさまざまなシーンでの感動体験と落胆体験を調査しているとある一定の法則が見えてきます。サービス品質を構成する要素の中で、「好印象」「正確性」「迅速性」が大きく損なわれると、落胆体験になりやすい一方で、「共感性」「柔軟性」「安心感」が大きく発揮されると感動体験を生みやすいことが分かります(図参照)。自社のサービスが落胆体験を引き起こしていないか、感動体験を生むためにはどうすれば良いかのヒントをつかむことができます。
ということで、僕の居酒屋でのホッピー感動体験を分析しました。感動に結びついたのは、「好印象」のサービス品質です。通常時は「好印象」は当たり前なので、なかなか感動までには至りませんが、自粛明けと心が弱っている状態の僕には笑顔だけで、感動に至ったと分析しました。サービスサイエンス的に言うと、状況で変化する個別的事前期待に店員さんはうまく対応した、ということですね。さすが、居酒屋激戦区の浅草ホッピー通りです。
図 サービス品質と感動体験、落胆体験