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2020年10月号 <わたちゃんのかすたま〜えくすぺりえんす>

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わたちゃん

導入ITの選択を左右する「営業レバレッジ」

ISラボ 代表 渡部弘毅

 「部長の今までの実績を踏み台にして頑張ります。定年、お疲れ様でした」と言うとカドが立ちますが、「部長の実績をレバレッジ(梃子の原理)にしてさらなる成長を目指します!!」と言えば聞こえがいいなと思う、わたちゃんです。モノは言いようです。

 営業レバレッジとは、企業の事業リスクを測定する指標のひとつで、売上げの変化に対する利益の感応度を示す指標です。ひらたく言うと、営業レバレッジが高い事業はそれが小さい事業に比べると、売上げがどんどん上がっていけば、営業利益も上がりますが、逆に売り上げが下がると、より営業利益も下がるという具合です。「レバレッジが効いている状態」というと、何となく聞こえがよいですが、悪い場合も効いているということです。

 したがって財務的な戦略としては、売上げが景気の動向に左右されやすい事業を実施している企業は営業レバレッジを低く抑えることが賢明ということで、その対策は初期投資コストの減価償却費の固定比率を下げて、変動比率を上げることです。

 近年ITの世界、とくにクラウドサービス分野ではサブスクリプションモデルが主流になっており、初期投資をしなくともライセンス数に対応した月額使用料で高機能なサービスが使えるようになりました。この月額コストが「変動費」です。つまり、サブスクリプションモデルを財務的に評価すると「営業レバレッジを低くして景気の変動への対応力を強化する」という施策になるのです。

 しかし、コストの変動費化がすべて最適とは限りません。市場自体が拡大して右肩上がりが見えている事業においては、営業レバレッジを高くする、すなわち初期投資分を大きくし、変動比率を下げた方がいい場合もあります。こうした企業がクラウド技術を使いたい場合は、プライベートクラウドなどを導入して初期投資額比率を上げて、毎月支払うコストを下げるといった手段も有効です。

 クラウドベンダー側は、サブスクリプション型、すなわちコストの変動費化が万能策のようにセールスをしていますが、対象企業の事業環境や財務状況を見極めたサービス価格のラインナップを充実してみてはいかがでしょうか。クラウド業界は、顧客の事業の成功を支援し離反を防止する意味での、「カスタマーサクセス」というワードが流行しています。これこそ、自社のクラウドサービスを利用したカスタマーサクセスを提供する施策のひとつと言えるでしょう。

 ということで、レバレッジの高い人も低い人も、企業にとっては大いに貢献した人です。定年まで勤め上げた方には、等しく「長い間お疲れ様でした」と送り出してあげましょう。

図 営業レバレッジ

図 営業レバレッジ


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