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2020年4月号 <インタビュー>

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山本 浩二 氏

CSが左右する“経営者の評価”
「将来の企業価値」への影響度

ジェイ・ディー・パワー ジャパン
代表取締役社長
山本 浩二 氏

CSは上げるのは難しく、下げるのは簡単。そして再び上げるのはもっと難しい──。国際的な顧客満足の専門機関、ジェイ・ディー・パワー ジャパンを率いる山本社長は、こう強調する。日産自動車で最先端技術の責任者を歴任した経歴を活かし、企業の変革を強力に支援する山本氏に、「CS」を経営指標化するポイントを聞いた。

Profile

山本 浩二 氏(Koji Yamamoto)

ジェイ・ディー・パワー ジャパン 代表取締役社長

大分大学卒後、日産自動車に入社。約30年間、米国での新車や新工場の立上げ、電気自動車のプログラムダイレクター、自動運転、コネクテッド・カー事業本部長などに携わる。新規調査やビジネス開拓を通じて、未来の自動車社会におけるJ.D. パワーの役割を果たすべく、2018年5月にジェイ・ディー・パワー ジャパンの代表取締役に就任。

──長く在籍されていた自動車業界における顧客満足(CS)の考え方について教えてください。

山本 2018年まで、日産自動車で主に新車開発・企画部門に従事してきました。そのなかには、電気自動車や自動運転、コネクテッド(車載デジタル端末を利用したコミュニケーションを軸とした諸機能)などの最先端技術が多く含まれています。

 自動車業界は現在、そうした技術革新を背景に、「100年に一度の変革期」とされています。かつての市場は、メーカー主導で開発した技術を消費者(顧客)が利用する、典型的なプロダクトアウト型でした。そのやり方は今や通用せず、常に顧客の声や意思─つまりCSを意識した技術開発が求められています。

──そうした劇的な変化が生じた背景を具体的に。

山本 これは自動車に限りませんが、スマートフォンの登場と普及が大きな契機になったと思います。消費者が欲しい機能をアップデートするだけで実装できる、つまり「アドオンできる商品やサービス」が当たり前になった結果、ほとんどすべての市場で顧客の期待値が向上しています。従って、商品開発は、消費者のニーズを従来以上に的確に捉えないと成立しない時代になったといえます。そのためにも、CSをいかに的確に捉え、それを起点に全社全部門でフィードバックサイクルを回す取り組みが、すべての業種における経営戦略上、大きなカギとなっているはずです。

──ほとんどのメーカーが同じようにニーズを反映させるので、個性的な商品が登場しにくく、コモディティ化のサイクルが短いなど「消費者の声を聞きすぎることで生じる弊害」も指摘されています。自動車も例外ではないと感じるのですが。

山本 確かに、メーカー主導で開発が進んでいたかつての方が、「燃費は今イチだけど運転性能が圧倒的に高い」といった、スポーツカーに代表される個性的な自動車が今より多かったのは事実です。しかし、自動車産業は膨大な開発コストと期間が必要なため、何十、何百と同時に製品をラインナップできません。消費者のニーズに一斉に応えた結果、“売れ筋”になりそうな平均的なデザインや性能に収束してしまった傾向が、とくに国産車メーカーに垣間見えるのは、そうした背景があるからだと思います。

 一方で、現在はコネクテッド・カーに代表されるように、スマートフォン並みにアドオンで機能強化できる余地も拡大しています。今後、後付けで「こんなこともできるのか!」というサプライズを伴う機能を提供することができるようになるのでは、と思っています。

CSは中長期的に捉える
「経営指標」として活用すべし

──CSを経営指標として活用するポイントについて、考えを聞かせてください。

山本 CSは、向上させるのは難しいのですが、下げるのは実に簡単です。そして、いったん下がったCSを向上させることは、さらに難易度が高まるという性質を持っています。従って、中長期的に測定し、フィードバックサイクルを構築するという活動を、全社同じベクトルで実施する必要があります。そうした意味では、いま現在の状態を示すというより「将来の企業価値を左右するキーファクター」と捉えるべきです。

(聞き手・矢島竜児)
続きは本誌をご覧ください


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