離職予防の「仕組み」と「制度」
Part.1 <現状と課題>
“万人受けする取り組み”はない!
「コミュニケーション」「IT」の両輪を強化
24時間営業の停止、休日の追加設定など、ES向上を目的に働き方を見直す動きが加速している。しかし、企業活動の受け皿であるコールセンターには、こうした施策がことごとくマッチしない。結果、チームワークの醸成や不満の抽出に対して、他の職場以上の注力が必要だ。面談機会を増やすといった人力による取り組みからITによる支援まで、全方位型の取り組みをまとめる。
デパート、コンビニエンスストア、ファミリーレストラン、観光ホテル。ここ1〜2年で休日を増やす、24時間営業を取りやめるなど、売り上げを犠牲にしてES向上施策に取り組みはじめた業界は数多い。この多くは、現場スタッフの雇用属性がコールセンターと競合している。
しかし、セールスやマーケテイング、そしてリスクマネジメントの受け皿であるコールセンターは、休日増や時短といった取り組みがことごとくマッチしない。「目先の利益よりもES」という取り組みを喧伝することで“ホワイト”な職場のイメージをつける──こうした取り組みがしにくい現状がある。
深刻な人手不足を解消するために、こうしたトップダウンによる施策が通用しない以上、現場がさまざまな工夫を凝らすしかない。編集部が行っている実態調査でも、「オペレータの採用・育成」を「運営上の課題」として半数以上のセンターが回答し、採用難対策として、モチベーション管理や時給の見直し、ITツールの活用を進めている。
基本的に離職予防は、手厚いマネジメントかIT投資、もしくはその組み合わせが必要だ。Part.1では、BPOベンダー各社が実践するさまざまな離職予防施策や、音声認識やHRテックの活用について検証する。
Part.2 <座談会>
“辞めさせない”ではなく“辞めたくない”
ポイントは成長を実感する研修と評価
コールセンターにとっての永遠の課題である、「人材確保」。オペレータの採用、研修、ベテランになるまでのそれぞれのフェーズにおいて、工夫して取り組んでいるES施策や効果がみられた制度について、情報交換を行った。各社口を揃えていたことは、「選ばれる職場になるため、研修を担うトレーナーの意識改革が必要」ということだ。
相変わらず人材難に悩むコールセンターは数多い。SBI証券 カスタマーサービス部長の河田裕司氏、テレコムスクエア コンタクトセンター部門 パフォーマンスエンハンスメントグループ マネージャーの中村康人氏、ジュピターテレコム カスタマーセンター統括部 東京カスタマーセンター マネージャーの平井摩子氏に、課題と解決策について聞いた。
平井氏はトレーナーの自立心を育てるため研修をするトレーナーの教育を刷新し、「オペレータが覚えていなければ教え方に原因がある」「教えたよねは禁句」という意識を育て、双方向の研修を目指した。中村氏は研修内容のバラつきを課題視し、映像化して研修を一律化。不安になったらいつでもおさらいができるツールになった。河田氏はESアンケートによる労働環境改善の制度としてシッター助成制度を導入するなど、労働以外のストレスや不安を最小限にする施策を実施。全センターがオペレータにとって“辞めたくない”環境を整備したことが共通しており、一定の成果を上げている。
出席者(左より)
●河田 裕司 氏
SBI証券
カスタマーサービス部長
●平井 摩子 氏
ジュピターテレコム
カスタマーセンター統括部
東京カスタマーセンター
マネージャー
●中村 康人 氏
テレコムスクエア
コンタクトセンター部門
パフォーマンスエンハンスメントグループ
マネージャー
●和泉 祐子 氏
カルディアクロス
代表