サブスクの本質は定額制でなく「登録制」にあり!!
ISラボ 代表 渡部弘毅
自宅の向かいにあるスポーツジムにほとんど毎日通っている、健康的なわたちゃんです。実は、通称「風呂会員」で、ほぼサウナと風呂しか利用していません。しかし、あれだけ毎日通っているのに常連さんのような対応がないのがちょっと不満です。
近年、お客様と企業の新しいWin&Winモデルとして、「サブスクリプション・モデル」のサービスが広がりつつあります。サブスクリプションとは、製品やサービスの購入に対してではなく、利用に対して代金を支払う方式で、定額料金制が主流になっています。従来から雑誌の定期購読や会員制スポーツジムなど、このモデルのサービスは多数、存在していましたが、クラウドサービスの登場でソフトウエア分野に広く適用されたことから、小売りやサービス業にまで拡大しました。結果、生活者のベネフィットが高まる一方で、企業の戦略やマーケティングのあり方を大きく変革する必要性が出てきました。
しかしながら、サブスクリプション・モデルの本質は「定額制」ではなく、その名が示すように「登録制」です。すべてのお客様の情報を事前に登録し、かつ、そのお客様がどんな購買や利用をしているかの履歴を把握できることに本質があります。すなわち、お客様にとっては、気軽に入会できる安い定額制で、かつ不要になった際にはすぐに退会できる気軽さというベネフィットを受ける代わりに、自分の情報と購買、利用履歴を企業側に提供するという関係を構築するということです。企業サイドは取得したお客様の情報を活用し、さらに価値の高いサービスを提供、お客様と企業がお互いにハッピーになるWin&Win関係を構築する──ということです。
しかしながら、この登録制の価値をうまく活用できていない企業も見受けられます。せっかく入手できたお客様の情報を利用せず、ただ単純に定額制だけのメリットでお客様を獲得&維持しようとしているビジネスに成功はありえません。小売り業におけるポイント制度と同様です。ポイント制度は、お客様はポイント還元の経済的メリットがある代わりに、企業に対して購買情報を提供します。企業はその購買情報を活用し、お客様の特性に合ったプロモーションを展開してこそ、はじめて価値が高まります。ポイントを値引きや単純な再来店施策だけに使うだけでは、価値を活かしきれていません。同様に定額制だけのメリットに頼るサブスクリプション・モデルに成功は難しいといえます。顧客情報の活用にはある程度のIT投資が必要ですが、購買だけでなくサービス利用やライフスタイル等のお客様の行動を把握できることになるサブスクリプション・モデルはポイント制度以上の可能性を秘めているといえるでしょう。
ということで、僕のスポーツジムも是非とも登録している僕の風呂会員の情報を活用して、常連対応をしてほしいと願っています。
図 サブスクリプション・モデルのWin & Win関係