“カスハラ対応”への処方箋
組織対応のために学ぶ「怒り」の制御術
日本アンガーマネジメント協会
理事
戸田 久実 氏
店員やコールセンターのオペレータに執拗に謝罪を求めたり、無理な要求を突きつける“カスタマーハラスメント”が社会問題化している。“相手の怒りに巻き込まれない”ためのトレーニングメソッドを広める戸田氏は、「怒りの正体を理解してその対応方法を学ぶことは、個人の問題ではなく組織の課題」と強調する。
Profile
戸田 久実 氏(Kumi Toda)
日本アンガーマネジメント協会 理事
2008年にアドット・コミュニケーションを設立。民間企業や官公庁などで「伝わるコミュニケーション」をテーマに研修・講演を実施。講師歴は27年。指導人数は20万人にのぼる。著書に「アンガーマネジメント 怒らない伝え方」「マンガでやさしくわかるアンガーマネジメント」など。
──“カスタマーハラスメント”が社会問題として取り上げられるなど、顧客の怒りの感情に苦慮するサービス現場が少なくありません。この背景をどう捉えていますか。
戸田 2000年以降、「CS経営」の考え方がますます広まりサービス品質の向上に注力する企業が増えました。その結果、顧客側は期待値を上げ、権利意識を高めることになったと感じます。さらにSNSの普及により“主張する消費者”が増え、「クレームは言っていい」という風潮が定着しました。怒りの感情は自分のなかの「こうあるべき」という期待が思い通りにいかなかったときに生じるものです。顧客の考える、こうあるべきが叶えられないと怒りからクレームとなります。
──対応に疲弊する現場の対応策は。
戸田 怒りの正体を理解し、対応方法を学ぶことをおすすめします。怒りは第二次感情と言われ、怒りの裏側に潜む第一次感情には不安や心配、悲しみ、落胆などがあります。怒っている顧客にはこうした第一次感情が潜んでいることを理解し、“共感”することがクレーム対応のポイントです。怒りの正体を理解できれば、相手の怒りに巻き込まれることを防げるようになります。顧客の怒りだけでなく、「つい言い返してしまった」など、自分の怒りに対して自己嫌悪を感じて悩む店員やオペレータは少なくありません。長年、コミュニケーションに関する相談を受ける中で、そうした悩みの解決法を模索してきましたが、2011年に「アンガーマネジメント」に出会い、体系化されたノウハウやトレーニングメソッドを広めることが多くの人の悩みを解決することにつながると思い、協会に参画することになりました。
怒りの感情は長くて「6秒」
やり過ごせば冷静になれる
──アンガーマネジメントについて具体的に教えてください。
戸田 1970年代に米国で、怒りの感情と上手に付き合うことを目的に開発された心理トレーニングです。自分の怒りの感情に悩む人は、「怒ってはいけない」「怒りは我慢すべき」と考えがちですが、アンガーマネジメントでは「怒りで後悔しないこと」を目指します。
(聞き手・石川 ふみ)
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