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本誌記事 トレンド カスタマーサクセス実態調査

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Trend 連載

成果を生む取り組み企業の共通点
急務は「脱・属人」「組織化」

──バーチャレクス・コンサルティング

「カスタマーサクセス」は、求人市場では注目されている新職業であり、顧客との関係性を強化し、ビジネスを維持・拡大する手法としても耳目を集める。バーチャレクス・コンサルティングは毎年、認知度や理解度、取り組み成果についての実態調査を行っている。調査結果と同社へのヒアリングをもとに本号と次号に分けて、結果を抜粋、検証する。

 「カスタマーサクセス」のビジネスパーソンにおける認知度や理解度がどの程度なのか。これは、同職の人材採用や、ITソリューション市場に関わる人間にとって、大きな関心事だ。

 バーチャレクス・コンサルティングは、2019年から毎年、「カスタマーサクセス実態調査」を実施している。2023年は、全国の20歳〜65歳の有識者2万9237人を対象にインターネット調査で行った。その結果について同社にヒアリング。本号と次号に分けて抜粋、検証する。

関心高いミドルマネジメント層
際立つ経営者の認知度の低さ

 図1は、「カスタマーサクセスに関する認知・理解状況」を聞いた結果だ。「聞いたことがない」という回答が82.5%を占めている。また、「聞いたことがある」という17.5%の回答者のうち、「カスタマーサクセスとは何か」を理解している割合は、今回の対象者全体の2.2%で、過去5年で最も低い結果という。

図1 [2023年]カスタマーサクセスに関する認知・理解状況(全体:n=29,237)

図1 [2023年]カスタマーサクセスに関する認知・理解状況(全体:n=29,237)

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 バーチャレクス・コンサルティング ジェネラルマネジャー 宮田麻美氏は、認知率の低さについて「回答者の数、幅ともに(他の調査よりも)大きい」ことを理由のひとつとしてあげたうえで、「大企業や一定以上の役職者の認知度は高い」と強調する。

 役職者の認知度についての集計を見ると、「本部長・事業部長」クラスの回答者は、宮田氏の指摘通り、「聞いたことがある」が43.9%を占めている。

 「聞いたことがある」という回答者の理解度についても、「非常に理解している」が最も多いのは本部長・事業部長で29.8%、「まあ理解している」の47.3%を合わせると75%を超える。「全く知らない」という回答は0.5%だった。会長・社長・CEOが「非常に理解している」が14.1%にとどまったのは気にかかるが、最も情報感度の高いミドルマネジメント層での認知・理解度は高く、役割・職種として徐々に定着しつつあることが伺い知れる(図2)。

図2 [2023年]「カスタマーサクセス」がどういうものかを理解しているか?(役職別)

図2 [2023年]「カスタマーサクセス」がどういうものかを理解しているか?(役職別)

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 なお、具体的な「理解度」については、回答は自己判断のため、多分にバラつきがあると推察される。宮田氏は、「カスタマーサクセスという呼称ながら、実際は従来のカスタマーサポート部門と業務は変わっていないケースも多いのが現状。目的や顧客との関係性、それを実現するための業務やシステムの考え方についてサポート部門との違いを明確化できていない傾向が強く、それが国内のカスタマーサクセス市場における課題のひとつ」と指摘した。

 また、カスタマーサクセスに関する識者やエバンジェリストは、「トップダウンかつ全社レベルで取り組む」必要性を説く傾向が強いが、今回の調査結果を見る限り、その段階からまだ遠い点も、今後の課題といえそうだ。

部署/担当者設置企業は微増
既存顧客重視の傾向は強まる

 カスタマーサクセスという言葉を認知している4604人に対して、「勤務先でカスタマーサクセスに取り組んでいる部署、または担当者がある/いるか」と聞いたところ、「部署がある/担当者がいる」という回答者は50.3%と、昨年調査からわずかながら伸長した(図3)。

図3 [2022年〜2023年]勤務先でカスタマーサクセスに取り組んでいる部署、または担当者はいるか?(経年比較)

図3 [2022年〜2023年]勤務先でカスタマーサクセスに取り組んでいる部署、または担当者はいるか?(経年比較)

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 「カスタマーサクセス部(本部)」という名称の組織があるか否かは問わないため、部署名として掲げているかは定かではない。新たなミッションや役割、機能として付与されたケースも含まれる可能性はある。いずれにせよ、「顧客のビジネスの成功こそが自社の収益向上に寄与する」というカスタマーサクセスの根本的な考え方が普及している層も多いことが伺われる結果といえよう。

効果の創出のカギを握るのは
「組織化」の有無

 カスタマーサクセスを「自身が担当している/社内に取り組んでいる部署、または担当者がおり、自身もかかわっている」と答えた500人に対して、その効果についても聞いている。結果、半数以上の55.2%が「効果を感じている」と回答した。

 同調査では「効果を感じている」という回答者を深掘りしているが、「担当者の人数が多い(組織化している)」「扱っている商材がサブスクリプション型」という回答者ほど、効果を実感している傾向が強い。宮田氏も、「組織としての取り組みになっているか否かは極めて重要。組織化されていれば、成果を体感できている回答が多い」と説明する。

 図4は、逆に「効果を感じていない」「どちらとも言えない」という回答者に聞いた「取り組んでいる課題」について聞いた結果だ。42%が「人材・組織体制が不十分」という課題に取り組んでおり、2位の「カスタマーサクセスに取り組むツールがない」以下を大きく引き離している。

図4 [2023年]カスタマーサクセス効果を感じていない/どちらとも言えない人が解決すべく取り組んでいる課題(複数回答)

図4 [2023年]カスタマーサクセス効果を感じていない/どちらとも言えない人が解決すべく取り組んでいる課題(複数回答)

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 カスタマーサクセスを実践している企業に取材・ヒアリングすると、「組織がスケール(拡大)するに伴い、ハイタッチ対応をできる人材の確保の難しさに直面」することを課題として挙げる傾向は強い。なかには、業務プロセスが可視化およびマニュアル化されていない事例企業もある。オンボーディングプロセスを自動化・省力化する、「テックタッチ」の成熟度を向上する必要性も高いと推察される。人手不足の解消のための属人化からの脱却と自己解決手段の促進は、コールセンターやカスタマーサポートと共通した課題であり、事例によっては相互補完できる可能性もありそうだ。

 言い換えれば、カスタマーサクセスの実践においては「組織化」「仕組み化」が成果をもたらすカギとなりそうだが、その成熟度が低いということは、ITベンダーやSI、コンサルティング・ビジネスにおいては大きな拡大の余地を残しているといえそうだ。調査を実施したバーチャレクス・コンサルティングでも、こうした課題を持つ企業に対し、コンサルティングやテクノロジー導入・構築などの運用をサポートするサービスを展開している。次号ではカスタマーサクセスの成果に関する回答結果をレポートする。

(2023年10月号 月刊「コールセンタージャパン」掲載)

 

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