生成AIでセンター運営は変わるのか──
ベンダー、ユーザー、BPOが期待値を検証
米OpenAIがリリースしたテキスト生成AI「ChatGPT」──コールセンター業界においても業務を変える期待が増す一方、セキュリティや正確性などのリスクを指摘する向きも強い。7月、都内にインハウス・BPOのセンター運営管理者や開発ベンダーなど、コールセンター業界に携わる識者が集結し、生成AIの活用に向けた可能性や課題を討論した(登壇者の所属・役職はセミナー当日のもの)。
サポートデジタル協会は2023年7月、カスタマーサポート業務における、大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)および生成AI「ChatGPT」の活用状況を紹介するセミナー「Support DX Summit 2023」を開催した。
最初に、コンタクトセンター運営者の視点から、生成AIの活用について討論した。モデレータを務めたプライムフォース代表取締役の澤田哲理氏は、生成AIを中心としたデジタル化に伴い、センターマネジメントで「エフォートレス化」「プロアクティブ化」が重視されつつあると指摘。りらいあコミュニケーションズ DX戦略本部 本部長の本岡晃彦氏は、「カスタマーサポート業界では、大きく分けて『音声データのテキスト化』と『応対履歴のVOC活用』の課題があったが、生成AIでその課題が解消される」と活用メリットを説明した。また、NeoContact 代表取締役の出水 啓一朗氏は、「DXを推進する企業が急激に増えている一方で、実際にAIツールを駆使できる人材の育成にも力を入れていく必要がある」と指摘した。
左から、りらいあコミュニケーションズの本岡晃彦氏、ベネッセコーポレーションの境 和輝氏、NeoContactの出⽔ 啓⼀朗氏
ベネッセコーポレーションは2023年4月、Azure OpenAI Serviceを活用した社内向けチャット「Benesse Chat」を運用開始。同社で校外学習カンパニー マーケティング開発本部の副本部長を務める境 和輝氏は、「社員一斉に生成AIを活用する体制を取り入れたことで、社内業務の効率化について議論する機会も増え、興味関心は非常に高い」と語った。
基調講演では、「LLMがカスタマーサポートに与えるインパクト」と題して、ワークスモバイルジャパン 執行役員 CLOVA統括本部 本部長の砂金 信一郎氏が登壇。砂金氏は、自動電話応対サービス「LINE AiCall」を開発する過程でもっとも意識した点が、「個人情報を含むデータの処理」と説明。また、生成AIが普及して以降も、AIのみでの顧客サポートは当面困難で、人間とAIによるハイブリッドなアプローチが必要と指摘。「AIが自動化できる範囲にも限界はあり、人間の判断や監督は不可欠。生成AIの導入自体が『目的』となることなく、効率的な業務改善を実現してほしい」と結論づけた。
ワークスモバイルジャパン 執行役員の砂金 信一郎氏