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2023年9月号 <市界良好>

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市界良好

<著者プロフィール>
あきやま・としお
CXMコンサルティング
代表取締役社長
顧客中心主義経営の実践を支援するコンサルティング会社の代表。コンタクトセンターの領域でも、戦略、組織、IT、業務、教育など幅広い範囲でコンサルティングサービス及びソリューションを提供している。
www.cxm.co.jp

QRコード使ってますか

秋山紀郎

 DXブームのもと、デジタル技術を活用し、新たな製品やサービス、ビジネスモデルを創出して変革しようと、各企業で取り組みが続けられている。QRコードを利用した決済はその推進役のひとつと言ってもいいだろう。QRコードは、Quick Responseの略で、日本のデンソーウェーブが1994年に開発した二次元コードであり登録商標だ。スマホで読み取ることで簡単にキャッシュレス決済ができるため、世界中で利用者が増え続けている。QRコードは、キャンペーン参加、デジタルチケット、アプリダウンロード、ビルへの入館、Wi-Fiアクセスなど、決済以外のサービスにも多く利用されている。一方、ホテルや空港利用時などQRコードが必須の場面で、スマホ画面に表示して読み込ませることができず、手こずっているシーンをよく見かける。私の場合、事前にスマホに準備していても、画面が動いてしまったり、明るさの関係でうまく認識できないことがあるため、可能であればQRコードを印刷した紙を持ち歩きたいと思っている。

 先日、地元で美味しいと評判のイタリアンレストランに初めて行った。入店すると、アットホームな雰囲気を感じた。着席してメニューを見ると、QRコードによるオーダー制だ。最近、このような店が増えているのは確かで、このサービスが登場した頃は、物珍しくてワクワクした。しかし、ほろ酔い気分でスマホを使ってオーダーするのは面倒だと感じている。店にもよるが、直感的にメニューが選べず、使いづらいことが多い。そして、オーダー時にお店の人と会話を楽しむこともできず、料理が美味しいと感想を伝えるタイミングもつかめない。つまり、お店の人との会話がほぼ発生しない。店を出たとき、食事というサービスを受けに行ったというより、お腹を満たしに行ったようで心が満たされず、残念ながらリピートしたいという気分にならなかった。

 もちろん、QRコード利用が便利な飲食店もある。オフィスの近所でランチに利用する店にもQRコードやタブレットによるオーダー制のところはあるのだが、これは便利だ。ランチメニューは種類が限られているから選びやすいし、短時間に決済できるのでスマートである。昼休みという、短時間に混雑しやすい店舗オペレーションの省力化にも、QRコードが貢献していると思う。

 さまざまな場面で使われているQRコードだが、利用者にとって便利なケースとそうでないケースがある。人件費を抑えられたから成功したと経営が判断したとしても、実は利用者の評価が悪いことも起きていると思う。デジタル技術もシーンによって、使い分けが重要なのである。高齢者は電話を好み、若者はチャットだと、世代で利用するチャネルを決めつけるのも適切ではない。使い方次第で、世代に関係なく不便になってしまう。QRコードの本当の導入価値は、利用者のデータ分析によってサービス改革を行い、利便性向上、収益アップに貢献することだ。そこまで結び付けた成功事例はあるのだろうか。一方で、カラーコード、3次元コード、肉眼では見えないQRコードなど、デジタル技術だけ先行している。どのように使うべきなのか、もう少し、そこに議論が必要だ。

 

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