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本誌記事 寄稿 Opinion(後編)

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Trend 寄稿

業務内容と米国データに学ぶ
サポートからサクセスへの職種転用(後編)

前回は、カスタマーサクセス業界における人材不足と市場価値の上昇について触れたうえで、サポートスキルを活かしやすい3つのカスタマーサクセス職の内容を検証した。今回は、カスタマーサクセス職種で応用できるサポートスキルの解説と、カスタマーサクセスへのキャリアを検討するうえで意識しておきたいポイントをまとめる。

白塚 湧士
Writer
KOMMONS 代表
白塚 湧士
1996年生まれ。京都大学を卒業後、三井物産に入社。CX領域の事業投資チームにてカスタマーサクセス・サポート領域の出資先との新規事業に従事。コールセンター事業会社に出向し、テクニカルサポートチームのマネージャー業務に従事。2020年に退職後、スタートアップでのカスタマーサクセスチーム立ち上げを経て、21年4月にKOMMONSを創業。

 前編で紹介した「カスタマーサポートでの経験を活かしやすい3つのカスタマーサクセス業務」が、(1)導入支援(オンボーディング)、(2)テクニカルサポート、(3)CS企画だ。まずは、これらに必要なスキルを深掘りし、サポート業務との共通点を解説する。

サポートで活かせる業務

(1)導入支援(オンボーディング)
 導入支援では、基本機能を活用できる状態になるまでサポートする。求められるスキルは次の通りだ。

1.多くの顧客に対して同時並行で支援を進めるマルチタスクスキル
2.導入支援を行いながら、業務を型化していく業務効率化スキル
3.基本的なITに関する質問も丁寧に対応できるITリテラシーとホスピタリティ

 1と3は、カスタマーサポートのオペレータが日々の業務で培っている基本スキルだ。2の業務効率化スキルは、品質担保のためのスクリプト作成やFAQ作成などの取り組みが近い。

(2)テクニカルサポート
 製品・サービスに関する技術的な問い合わせにプロフェッショナルとして応対するのがテクニカルサポート職だ。求められるのは以下のスキルである。

1.製品・サービスを理解し、問い合わせに対応する基本的なITスキル
2.基本的なITに関する質問も丁寧に対応できるホスピタリティ
3.社内の他チームと連携するコミュニケーションスキル

 コールセンターやカスタマーサポートチームでは業務効率化のため、自社内にITツールを導入しているケースも多い。そうした環境で業務をしていると、気付かぬうちに基本的なITスキルを得ているスタッフも多いだろう。3のスキルは、所属チーム以外のメンバーとコミュニケーションを取り、マニュアルに記載されていない問題の解決に繋げる機会などを通じて培われる。まだマニュアル整備が進んでいないサポートチームの立ち上げ期にそのような経験を積む機会が多くなると想定される。

(3)CS企画
 CS企画では、契約以降の顧客体験の設計や、カスタマーサクセス業務全般の型化・自動化を進めていく。求められるのは以下のスキルだ。

1.顧客にとって最適な支援フローを設計できるオペレーション構築スキル
2.顧客のデータを用いて、支援フローの改善を行うデータ活用スキル
3.反復や無駄が生じている業務の標準化・自動化を行う業務効率化スキル

 カスタマーサポートの対応フロー改善に取り組んでいる人材にとっては、この3つの内容と、顧客の問い合わせに適切な対応フローやマニュアルで対応していくサポート業務が酷似していると実感するのではないだろうか。このほか、CS企画は、問い合わせデータを分析し、件数の多い問い合せからFAQとしてコンテンツ化する、問い合わせ内容をいくつかのカテゴリに分け、IVRで顧客を振り分けるなどの改善が必要だ。これもサポート人材にとっては馴染み深い仕事であり、そのままカスタマーサクセスでも活かすことができるスキルだ。

図 カスタマーサクセスとカスタマーサポートの共通点と相違点

図 カスタマーサクセスとカスタマーサポートの共通点と相違点

※画像をクリックして拡大できます

自らキャリアを創る姿勢を持とう

 コールセンターやサポートチームでの業務は、マニュアル化され、体系だったルーチンワークを体験できる貴重な場といえる。一方、個人のキャリアを考えると、オペレーションへの従事だけでは人材市場における価値は上がりにくい。顧客のニーズを理解した次には、そのオペレーションの構築に挑戦できると良いだろう。コールセンターでは、SVやマネージャー、QAなどの業務内容もそれにあたる。

 ITスキルは、活用が進んでいる環境にいると、必然的に慣れてくるものだ。現在、BtoC向けのITソリューションを提供する企業でカスタマーサクセスの取り組みが普及しているため、カスタマーサクセスキャリアには繋がりやすいと言える。

 個人のキャリアを考えると、新しい価値を“作る”経験を積む必要があるが、いきなり顧客への価値を新しく作ることにハードルを感じる傾向は強い。そこで、カスタマーサポートの現場経験を通じて、まずは顧客のニーズを掴むことから始めるのは合理的な選択のひとつだ。

 その一方で、新しい価値を“作る”機会は全員に与えられるとは限らないことを意識しておかなければならない。カスタマーサポートはコストセンターと見なされ、組織として現状維持バイアスが働きやすいからこそ、個人で能動的に業務を選び、キャリアを自ら作りに行く力が求められる。

 オペレーションを構築・改善・運用するスキルはどの職種でも求められる貴重なスキルだ。カスタマーサクセスに挑戦するかどうかに限らず、カスタマーサポート業界で活躍する人材が「能動的にキャリアを作る」ことを考えるきっかけが必要といえそうだ。

(2023年8月号 月刊「コールセンタージャパン」掲載)

 

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