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コロナワクチンの予約業務における不正行為、受託したパソナが編集部の質問状に回答

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コールセンター業務のBPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)において、不正が発覚した。

発覚したのは、人材派遣大手のパソナが枚方市、吹田市、西宮市の3市から受託した新型コロナウイルス感染症ワクチンの接種予約センター業務における不正行為で、再委託先のBPOベンダーであるエテル(大阪市中央区)が応答率など、パソナへの報告を改ざんしたものだ。

パソナによると、2022年11月1日、枚方市から「電話対応完了数」と「予約システムでの予約完了数」に差異があると指摘を受けて調査。エテルからパソナに報告されたオペレータ数よりも実際に稼働していた人数が不足していたことが発覚したという。その後、同じくエテルに再委託していた吹田市、西宮市のコールセンター業務について も、虚偽報告及びそれに伴う過大請求が発覚した。

コールセンタージャパン編集部では、本件の報道を受け、パソナに質問状を送付。その回答を以下にまとめる。


●再委託先にエテルを選定した理由
当社(パソナ)は、事業を受託する際に、適切な企業とパートナーシップを結び、再委託を行うこととしている。コールセンター業務についても、グループ会社のほか、実績や体制などをもとに最適なパートナーを総合的に判断し、契約してきた。 しかしながら、今回の事案は、緊急を要するもので全国各自治体で同時期に業務が開始されたことから、これまで契約実績のある事業者が対応できない状況だった。そのため、(1)大阪を本社とし、(2)同事業の選定基準でもあるプライバシーマーク認証およびISMS認証を満たしている事業者であるエテルを契約先として選定した。

●エテル社の業務に対し、監査/チェックはどの程度の頻度で、どんな内容を行っていたのか。
再委託先の管理・監督においては、事業の開始に合わせて、現地調査を含め体制の整備を確認し、その後も日次報告書類や週次ミーティング、日々の連絡、複数回の現地調査等を通じて、管理監督を行ってきたが、虚偽の報告がなされていることに思い至らず、こうした事態になってしまった。

●再委託先のセンターのチェック状況
◆吹田市、西宮市:
(1)日次報告書:着信件数、応対件数、応答率、平均通話時間、応対件数の内訳など、(2)1時間おきの入電詳細。具体的には1時間ごとの着信件数・応対件数・応答率など
毎日、上記の報告を受けていたが、(エテルは)「日次報告書」においては予約開始日などを中心に対応数や応答率を水増ししていたほか、「入電詳細」については時間ごとの 入電件数を辻褄があうように改ざんしていた。
◆枚方市
(1)日次報告書:着信件数、応対件数、応答率、平均通話時間、応対件数の内訳など、 (2)オペレーター応対詳細:オペレーターごとの通話回数・通話時間平均・休憩回数・休憩時間合計など、(3)入電詳細(10分おき):10 分ごとの着信件数・応対件数・応答率等を1時間ごとに報告
他2市と異なり、平常時は「日次報告書」において管理。予約開始日などの電話が集中する日については、日時報告書に加えて「入電詳細(10 分おき)」の報告を受 けていたほか、オペレータの氏名と対応件数・時間等を記載した「オペレータ対応詳細」の報告を受けていた。しかし、枚方市においても、「日次報告書」や「入電詳細」において対応数や応答数を水増ししていたほか、オペレータ詳細については、退職者の名前を記載して水増しするなどの対応を行っていた。


●再委託した案件について、コール量予測はしていたのか。実測値に基づく増減員について、契約時の決まりごとはあったのか。
当初の契約では各市の接種対象人口などを基に、市側と協議のうえで各期間の契約席数を決定し、それに従いエテル社に発注。また、その後もコロナワクチン接種対象者の変更などに応じて、各市の接種券発送日や予約受付開始日のコール量の想定数などを踏まえて円滑に予約ができる体制を考慮し、市側と協議のうえで各期間の契約席数を決定してきた。契約席数については、実際の運営状況をもとに変更されるケースもあった。

●他の自治体から受託をエテルに再委託している案件の有無、それとエテル社との取引実績は過去、あるのか。あるとすれば、その際、問題が発生したことは。
3市より受託した当該案件以前、過去に取引実績はない。

●他の類似の受託案件に対するチェックは実践した(あるいはしている)のか
同様の事業で再委託を行っている、他の自治体受託案件において社内調査を行った結果、同様の不正は確認されていない。

●再発防止策
今回の事態を受け、各市の上記コールセンター業務の再委託先を別のコールセンター事業者に変更。また、以下の再発防止策を講じ、管理体制を強化する。
(1)事業責任者が月次で再委託先事業者のコールセンターにおいて立ち合いのもと、「稼働履歴一覧」「カスタマーコントロール(着信呼数照会サービス)」の証憑データを出力し、再委託先事業者からの報告内容との整合性を確認した上で、各市に対して報告する。(2)再委託先事業者との定例月次報告会を再委託先事業者のコールセンターにおいて開催するほか、月1回の抜き打ち巡回を実施し、契約席数の稼働状況を目視確認する。(3)代表取締役社⻑直下の本部組織にて、再発防止策の実施状況についての点検を四半期ごとに実施する。


業界を挙げて取り組むべき!
ブラックボックス化を回避する活動


エテルに対してパソナが求めていた報告書の概要は、他のBPO業務とさして大きな差はないと推察される。しかし、時間帯ごとに区切ったレポートを辻褄のあうように改ざんし、退職したオペレータ名を記載するなど、悪質性は極めて高い。なお、編集部では2月21日にエテルにも取材依頼を公式サイトから行ったが、26日正午現在、回答はない。

コールセンターのBPOにおける報告データの改ざんは、過去にも報道され、耳目を集めたことがある。にも関わらず、こうした事態が再発したことは、BPOベンダーやBPOという手法そのものの信頼性、ひいては職場としてのコールセンターのブランドを著しく毀損するものだ。

識者や経験者からは、「とくに緊急時の委託においては運営状態がブラックボックス化してしまいがちで、過去に不正をされた経験がある」「紳士協定としてKPIが存在する。意図的に改ざんされていたら見抜くのは難しい」という声があがった。とくに今回のような「再委託」というモデルにおいては、委託元の監視の目は届きにくい。

人手不足が加速している現在において、BPOのニーズはさらに高まるだろう。場合によっては再委託モデルも利用せざる得ない市場環境にある。一次受託するBPOベンダーの管理能力はもちろん、委託元である企業や団体のベンダー・マネジメントスキルが問われる状況にあることは言うまでもない。まずは、レポートや現場の監査やチェックによる運営状況の透明化を図ること、そして委託元がコールセンター運営の基礎であるKPIの読解力を身に着けること、そのスキルに基づいてBPOベンダーを選定するといった、「一般ビジネスにおける常識」に基づいた受委託の関係性構築が必要だ。

またもや繰り返されたBPOベンダーによる報告の不正。業界全体のイメージを低下させる不正行為であり、すべての市場関係者は「対岸の火事」と捉えるべきではない。コールセンター業界をあげて、委託元である企業・団体の知識やスキルレベルを向上する活動、そしてBPO各社には不正を働かない自浄機能の強化が求められるだろう。

編集部では、BPO活用における特集記事、セミナーの配信を予定している。

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