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2022年10月号 <市界良好>

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市界良好

<著者プロフィール>
あきやま・としお
CXMコンサルティング
代表取締役社長
顧客中心主義経営の実践を支援するコンサルティング会社の代表。コンタクトセンターの領域でも、戦略、組織、IT、業務、教育など幅広い範囲でコンサルティングサービス及びソリューションを提供している。
www.cxm.co.jp

カスタマーエフォート

秋山紀郎

 買ったばかりのパソコンに不具合が生じた問題で、コールセンターに11回も電話した。新品と無償交換するだけだったが、誤って2回カード決済されるミスも被り、その影響でセキュリティのためにクレジットカードが止まってしまうなどの二次被害も生じた。事態を正常化するための私の苦労は大きく、甚だしい“エフォート”(努力)をした経験であり、時間の浪費が大きかった。もう少しエフォートが小さいケースも最近経験した。保険の手続きをしたのだが、内容について確認したいことがふと頭に浮かび、2日後にセンターに電話した。最初の手続きできちんと説明があれば、電話するというエフォートは必要なかったと思う。

 カスタマーエフォートを直訳すれば、顧客の努力ということになる。顧客が抱えた問題の解決や、商品購入やサービス利用するまでに顧客がかけた手間や労力を指すのだが、努力という言い方もエフォートのままでもピンとこない。私としては「お客様に、どれぐらいご負担をお掛けしたか」という解釈が良いと思っている。私が経験した2つのケースは、負担度合いは大きく異なるが、カスタマーエフォートである。

 カスタマーエフォートを把握するため、「サービスを利用したときの努力度」を5段階や7段階で尋ねるカスタマーエフォートスコア(CES)が使われることがある。CESを把握すると、カスタマージャーニー上のコンタクトポイントにおける顧客の負担を削減し、カスタマーエクスペリエンスや顧客ロイヤルティを向上させる施策につなげられる。しかし、CESを把握するための質問の仕方が難しい。「努力」は各自の尺度だから顧客1人ひとりで異なる。例えば、店舗に長い行列を作った場合でも、好きなブランドなので苦にならないという人もいるだろう。逆に、1回のコールでオペレータにつながっても、「私は努力した」と評価する人もいる。CESの測定にこだわらなくとも、本来必要がなかった、あるいは避けられたにも関わらず、コールセンターに問い合わせをさせてしまったり、店舗まで足を運ばせてしまったなどの代表的なエフォートは、各コンタクトポイントの既存のKPIだけで分かることも多いはずだ。接続率や一次解決率でもエフォートは分かる。

 本来は、CES調査でも既存のKPIでも埋もれているエフォートの把握に努めるべきだ。例えば、分かりづらいWebサイトの記載、望んだ回答が出てこないFAQなどは、なかなか測定が難しい。「こんな負担を掛けているのではないか」という具体的な利用シーンを設定してデータ分析をしなければ分からない。また、日々の応対でも埋もれているケースがある。例えば、コールセンターへの問い合わせに対して店舗を案内する場合などだ。センターではケースクローズとなるのだが、店舗に行った顧客のエフォートを想定しているだろうか。店舗としては、コールセンターから案内されたのか、通りがかりに立ち寄ったのか、あまり気にしていないことも多い。サービスの現場で、エフォートレスを意識するマインドがなければ、把握も改善しない。恐らく、企業が認識している以上にカスタマーエフォートを軽減するポイントは、数多く存在する。

 

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