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2021年8月号 <インタビュー>

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佐伯 美奈子 氏

顧客体験を全方位で把握する!
「カスタマーファースト」冠する本部の役割

アクサ損害保険(アクサダイレクト)
取締役 デピュティCEO 上級執行役員
佐伯 美奈子 氏

保険商品の「選び方」は、コロナ禍を経て、非対面接点の役割とカバー範囲が拡大した。保険対象である自動車やバイクの使い方も変わっている。アクサ損害保険は、こうした「変化」を敏感に察し、全社で共有する役割を担う「カスタマーファースト本部」を設置、VOCを経営資産として活かす方針を貫いている。

Profile

佐伯 美奈子 氏(Minako Saeki)

アクサ損害保険(アクサダイレクト)
取締役 デピュティCEO 上級執行役員

1996年サンダーバードアメリカン国際経営大学院卒。富士銀行(現・みずほ銀行)入行。金融・通信業界でカスタマーサービス、マネジメントの経験を経て、2019年10月にアクサ損害保険(アクサダイレクト)に入社。チーフカスタマーファーストオフィサーとして、お客様の声を商品・サービスにつなげる仕組みを確立する一方、DXによるカスタマーエクスペリエンス向上を実現。

──コロナ禍で、保険に関する顧客の考え方や行動は、どのように変化しましたか。

佐伯 ライフスタイルの変化に伴い、保険を見直す動きが活発になったと感じます。例えば、公共交通機関の利用を控えるため、通勤用のバイクを購入、保険に加入されるケースもありますし、逆に車に乗る機会が減って、走行距離によって料金が変わる保険への転換を検討される方もいます。会社としては、VOC(お客様の声)を的確に把握・分析して、こうした変化をタイムリーにキャッチしないとニーズにマッチする提案、商品開発が難しくなっています。

 コロナ禍では、従来、保険を選ぶ際に対面を重視してきたお客様も非対面を望まれています。これに伴い、保険業界全体のデジタルシフトも急速に進んでいます。(アクサダイレクトも)2017年からデジタルトランスフォーメーションを推進していますが、今後もさらなる加速が必要だと感じています。

──VOC分析とデジタルシフトは、顧客接点の問題というだけではなく、経営課題ということでしょうか。

佐伯 お客様の行動変化は、リサーチなどでもある程度までは把握できます。しかし、潜在的なニーズをキャッチするには、お客様とのやり取りから得られるVOC分析がとくに重要です。VOCは主にコールセンターで収集し、私が統括するカスタマーファースト本部が分析、管理しています。VOC活用でもっとも重要なのは、すべての部署が「お客さま第一」を考えること。カスタマーファースト本部は、「お客さま第一」主義のもと、関連部署の連携を強めます。

 各部署とも、自分たちのエリアのCX(顧客体験)は理解しています。各部署がそれぞれ得た声や行動をもとに個々に改善するだけではなく、カスタマージャーニー全体を把握したうえで改善することも重要です。例えば、保険金支払いのタイミングで、「約款にこのような記載がされていたなんて知らなかった」というお客様の不満を解消するには、支払いのオペレーションを見直すよりも、契約お申込み時のご案内方法を変える方が有効な場合もあります。

ペインポイントを示すVOCに着目
課題を抽出し解約を防ぐ

──カスタマーファースト本部がカスタマージャーニーを全方位でみて、課題の優先順位をつけて改善につなげていくということでしょうか。

佐伯 VOCをベースとした一連の活動はカスタマーファースト本部が主体となりますが、経営陣をはじめ、全部署の担当者が集まる、「カスタマーファーストボード」という会議を毎月、開催しています。そこで、リスクや緊急性、投資対効果などさまざまな角度で課題を整理したうえで優先順位を設定し、経営戦略にきちんと紐づいているか検証します。明確に優先順位が高い課題を見つけることももちろん重要ですが、ボディーブローのように少しずつダメージを拡げるようなペインポイントを示すVOCにこそ着目したいと考えています。

(聞き手・石川 ふみ)
続きは本誌をご覧ください


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