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2021年6月号 <インタビュー>

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山田 久 氏

コールセンター市場への新しい期待値
「シェアリング型一時雇用」のメリットと注意点

日本総合研究所
調査部 主席研究員
山田 久 氏

飲食や観光など、新型コロナ禍の終息後の需要回復に備えて人材を手放せず、一時的に“余剰人材”を抱える業種は少なくない。そうした人材の受け皿となっているのが、慢性的な人手不足に悩むコールセンターだ。企業間で人材を“シェア”する、「シェアリング型一時雇用」に詳しい、山田氏にその価値や留意点を聞いた。

Profile

山田 久 氏(Hisashi Yamada)

日本総合研究所 調査部 主席研究員

1987年、京都大学経済学部卒業。1987年、住友銀行(現・三井住友銀行)入行。1993年、日本総合研究所調査部出向。2003年、法政大学大学院修士課程(経済学)修了。2015年 京都大学 博士(経済学)。2019年、日本総合研究所主席研究員兼副理事長、現在に至る。

──新型コロナ感染症の人材市場に対する影響は。

山田 飲食や観光、航空など、需要が大きく落ち込んだ産業では、一時的に多くの余剰人材を抱えています。しかし、パンデミックが終息すれば、再び需要が回復することが見込まれるため、安易に人材を手放すことはできません。一方で、一時就労の外国人労働者を多く活用してきた農業や、消費のオンラインシフトによって需要が伸びているEコマース(EC)関連などでは、人手不足が深刻です。こうした背景から、産業の枠を超えて人材を共有しリソースを確保する、「シェアリング型一時雇用」が注目されています。

──「シェアリング型一時雇用」について具体的に教えてください。

山田 簡単に説明すると、一定期間、人手が余っている企業から不足している企業に人材を提供する仕組みです。形式としては、在籍出向、副業、派遣、請負の4種類が想定でき、それぞれ法律をはじめとしたルールが異なります。いずれも従来から存在する手法ですが、コロナ禍でとくに盛んなのが、在籍出向です。これは基本的に、出向元の企業の社員として、出向先の業務に携わります。従来の在籍出向は、グループ間で行われ、グループ企業のシナジー効果を高めることやキャリアパスの一環で行われてきました。しかし、コロナ禍では資本関係のない異業種間でも盛んに行われているのが特徴です。

出向元、出向先、就業者──
3方にメリットある雇用維持施策

──コールセンター業界でも、ANAやJALの社員を受け入れている企業が報道されました。シェアリング型一時雇用を実施するメリットは。

山田 基本的なメリットは、主に3つあります。出向元の企業にとっては、これまで育成してきた人材の雇用を維持できるということ。感染症流行が終息し、需要が回復してきたときに備え、人材を手放さずに済むのは大きなメリットです。一方、出向先の企業にとっては、一時的とはいえ人手不足を解消できるということ。コロナ禍でいうと、特殊な状況によって一時的に需要が高まっている業種では、長期雇用を前提とした人材確保はリスクがあるため、一時的な確保が望ましいのです。最後に、就業者にとっては働く場を確保できること。休業支援制度を活用するなどして、しばらく仕事を休むという選択肢もあると思いますが、長期間の休業はせっかく身につけた技能をなまらせたり、生活リズムが崩れるといったマイナスの影響もあります。また、就業は収入だけでなく、社会参画を通じた自尊心の維持にも直結します。このように、出向元、出向先、就業者の3方にとってそれぞれのメリットがあるのですが、異業種間におよぶことで、さらなるメリットが期待できます。

(聞き手・石川ふみ)
続きは本誌をご覧ください


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