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2020年10月号 <インタビュー>

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玉城 絵美 氏

場所を問わず「身体感覚」を共有する
5Gがもたらす新たなコミュニケーション

H2L 創業者
早稲田大学 准教授・博士
玉城 絵美 氏

いよいよ普及期を迎えた新移動通信システム「5G」。LTEの1000倍におよぶ大容量化で、顧客接点はどのような変化を遂げるのか。AIやVRなどの最新技術はどう進化し、企業のサービスや顧客体験をどう変わるのか。米タイム誌の「世界の発明50」にも選ばれた科学者、玉城絵美氏に近未来のコミュニケーションを聞いた。

Profile

玉城 絵美 氏(Emi Tamaki)

H2L 創業者 早稲田大学 准教授・博士

1984年沖縄生まれ。2006年琉球大学工学部卒業後、筑波大学大学院(修士号)、東京大学大学院(博士号)を修了し、早稲田大学准教授。ロボットやヒューマンインターフェースの研究を行う。2011年米『タイム』誌の「世界の発明50」に選出。H2L 創業者。

──スマートフォンなどデバイスの進化に加え、コロナによりコミュニケーションが変わりつつあります。技術者として現状をどう捉えていますか。

玉城 AIにせよVRにせよ、これまで研究室で開発されていたさまざまな技術が社会実装され、ロケーションを問わない、遠隔地でのコミュニケーションが変貌していく、大きな転換期に来ていると感じています。例えば、「BodySharing(ボディシェアリング)」はその技術のひとつです。

 1984年にスティーブ・ジョブズがMacintosh FinderとしてGUI(グラフィカル・ユーザー・インタフェース)を世に普及させる前は、コンピュータはコマンドラインで入力して操作するのが当たり前で、一般の人が広く使うことは想像すらされていませんでした。GUIの技術自体はそれよりずっと前からあったものですが、ジョブズが“使える形“にし、魅力をPRしたことで、社会のあり方を変えるほどに爆発的に普及しました。今も同じです。すでに開発されている技術は数多くありますが、その技術が社会的に認知され、普及するには、研究者だけでなく、ジョブズのような存在による強力なプッシュが必要なのです。

身体感覚を共有し
同じ体験を可能にする

──玉城先生が推進しているボディシェアリングとはどのようなものですか。

玉城 ボディシェアリングは、テクノロジーの力を使って「身体の感覚と情報を他人にシェアする」技術です。これは、人間とネットワーク、ITとの一体化を研究する「オーグメンテッドヒューマン」や「アバター」技術などとともに、日本が世界をけん引するほど研究が進んでいる領域の一部です。さまざまな領域の研究者が共同研究しこの分野を強化していくことは、国家戦略のひとつともされています。

 これまで、人はさまざまな体験を視覚、聴覚で共有してきました。例えば、テレビではリポーターが食レポをしていますが、これは視覚と聴覚のみで情報を共有するものです。最近ではYouTubeでウェアラブルカメラを使って、バンジージャンプなどの体験を視覚的に共有する動画も増えています。これらは「他人の体験を疑似体験できる」という付加価値を提供しているのです。

 ボディシェアリングは、視覚・聴覚以外に、「身体感覚」をも共有する仕組みを提供しています。他者の身体を自分が持っているという「身体所有感」や、自分が他者の身体を動かしているという「身体主体感」を体感として与えるのです。この技術は、場所や性別、年齢を超えた「経験の共有」を可能にします。例えば、甲子園で投球する高校球児の体験は、ほとんどの人がすることはできません。私は女性で、高校生でもなければ運動神経も人並み以下です。でも、ボディシェアリングが実用化されれば、投球者が実際に感じるボールの重さ、腕の動き、筋肉の使い方を体験できるわけです。

(聞き手・嶋崎 有希子)
続きは本誌をご覧ください


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