<コーナー解説>
店舗など、コールセンター以外を含めた接客やサービスのプロにその心構えやノウハウを聞きます。
否定ではなく「もう一回!」
指導のポイントは“肯定表現”
花柳流日本舞踊教室
花柳 乙女椿 さん
Profile
2004年に京都五花街の一角・上七軒で置屋に入り、舞妓として3年過ごす。日本舞踊を専門的に学び、花柳流の名前を授かる。2017年、恵比寿にて「花柳流日本舞踊教室」を設立した。
「へえ」「おおきに」「おたのもうします」──花柳流日本舞踊教室の乙女椿さんは舞妓時代、置屋の女将さんに『最初はこの3つの言葉をお客様の前で使うようにしなさい』と教えられたという。これらはすべて肯定の言葉であり、つまりは「お客様に“ノー”を言ってはならない」という究極のおもてなしの心意気であり、女将さんが教える花街に伝わる美学だ。
教室には女優や舞妓志望など、将来の夢を持って入門している生徒もいる。そういった生徒に対して「相手を否定しない」美学をレッスンに活かしつつ、厳しく指導をする。しかしそれは、叱ったりダメだしをするのではない。その代わり、ひたすら「もう一回」と指導するのだ。たとえ完璧でなくとも、「手の動きが美しかったですよ」と褒めつつ、「足の動きがしなやかになれば、もっと良くなります」と、肯定表現でアドバイスをする。「同じ意味でも、表現ひとつで生徒のモチベーションは変わります」(乙女椿さん)。また、どのような場面でも決して高圧的にならず、笑顔と明るさを絶やさない。
京都の舞妓時代の美学を守りながらも、元芸妓として日本舞踊の文化と芸者の心を、正しく伝えていくよう試みている。
もちろん、そうした芸の道を極めるわけではない、趣味や教養のために習う生徒のほうが実際には多い。そのような生徒には、楽しんで続けてもらうことを何よりも重視している。「より多くの人に楽しんでもらいたい」と、乙女椿さんはレッスンへの想いを打ち明け始めた。