「CSナンバー1」もたらしたIT&VOC改革
次のステップは“選ばれる金融プラットフォーマー”
住信SBIネット銀行
代表取締役会長
藤田 万之葉 氏
FinTechの普及やキャッシュレス化によって、銀行の業態や役割は大きく変わりつつある。住信SBIネット銀行は、積極的なIT投資を進める一方、VOCを起点としたUX改善に注力。さまざまな評価機関から「CSナンバー1」の評価を受けたIT基盤を他業種にも開放している。藤田万之葉会長に躍進を続ける背景を聞いた。
Profile
藤田 万之葉 氏(Mashiba Fujita)
住信SBIネット銀行 代表取締役会長
1959年生まれ、愛知県出身。1982年に名古屋大学を卒業後、住友信託銀行(現・三井住友信託銀行)に入社。執行役員投資営業推進部長、執行役員福岡支店長などを経て、2014年4月より現職。趣味は水泳。週3〜4日、スポーツジムのプールでトレーニング。
──金融業はDX(デジタルトランスフォーメーション)がもっとも進んでおり、なかでも住信SBIネット銀行はその急先鋒というイメージがあります。
藤田 長く続いた低金利によって、金融機関にとっては厳しい経営環境が続いています。とくに既存の金融ビジネスは収益が上がりにくい状況で、それは今後も続くでしょう。銀行は、デジタルシフトによる業務効率化とともに、FinTechやキャッシュレスなど、顧客の利便性を高める、新たな仕組みの創出が必要です。一方で、そうした新たな領域にはさまざまな業種からの新規参入が相次ぎ、競争は激化しています。弊社は業界で初めて、IT企業に対し、プラットフォームに連携できるAPIを提供しさまざまなIT企業との提携を進め、FinTechの発展をけん引してきました。結果、2007年の営業開始から着実にビジネスを拡大し、預金5兆1000億円、住宅ローン5兆5000億円を突破しています(2019年11月末時点)。
──一時的ではなく、成長を継続できている理由を詳しく教えてください。
藤田 経営理念として掲げている、「金融業における近未来領域の開拓」と「革新的なビジネスモデルの追求」にまじめに取り組んできた結果だと思います。顧客中心主義を徹底し、銀行取引のストレス解消を追求することが、お客様からの評価につながったと感じます。具体的には、顧客体験とロイヤルティの分析を起点に、最新のテクノロジーや仕組みを活用して、常にサービスの改善や開発を進めています。例えば、リアル店舗を含め顧客接点を多様化し、WebのUX改善やアプリの開発などで利便性を追求しました。FinTechの活用で、好金利、低手数料を実現し、他社にはない魅力的な商品を出すことにも注力しています。
──実際に、多くの評価機関による調査で、「CS(顧客満足度)ナンバー1」と評価されていますね。
藤田 調査結果に一喜一憂するのでなく、何が良かったのかを分析して次につなげることが重要です。現在は、住宅ローンに強みがあるため、お客様は30代以上が中心になっていますが、20代のお客様にも関心を持ってもらえる商品、サービスの開発に活かしていきたいです。
(聞き手・石川 ふみ)
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