「BtoCのカスタマーサクセス」を考える
ISラボ 代表 渡部弘毅
娘たちには「将来、自分はどうありたいかを考えて今の仕事に取り組みなさい」と言っていますが、カミサンからは「後先考えずに欲しいものを買うんじゃない!!」と説教されている、わたちゃんです。
近年、お客様と企業の新しいWin-Winモデルとして、サブスクリプション型のサービスが広がりつつあります。サブスクリプション型が短期間に、かつ広範囲に普及したITソフトウエア業界、なかでもクラウド業界は、この変革を察知して「カスタマーサクセス」という考え方を提唱し、「カスタマーサクセス・マネージャー」という新たな職種も誕生しました。
ある書籍によると、カスタマーサクセスとは「本質的にリテンション率とLTVを最大限引き上げることを目標として、カスタマーエクスペリエンスに特化した組織のこと」であり、カスタマーサクセス・マネージャーは「顧客が自社製品の価値を最大限に引き出せるように手助けする人物」と定義しています。つまり、カスタマーサポート組織でもなく、リテンション営業組織でもない、文字通り、自社のサービスを通じてお客様の成功を支援することに特化した組織であるということです。
しかしこうした定義は、BtoCモデル、すなわち一般消費者を対象としている企業にとっては、少し違和感があるはずです。「自社の商品を使って消費者のカスタマーサクセスを支援することに特化した組織」と言われても、ピンとこないでしょう。今の組織や業務に、この考えをどう取り入れるかが重要です。
その場合は、「お客様の一歩先を考えた対応をすること」と定義してみましょう。今の対応結果や満足度を追求するのではなく、お客様の将来の体験を考えて対応することがカスタマーサクセス、という定義です。
たとえば、アパレルショップの現場では、毎日の売り上げに追われています。結果、お客様が少しでも興味を示した服があれば「お似合いですよ」と薦めがちですが、このお客様には似合わない、と思うこともあるはずです。そんな時には、お客様の一歩先の体験、すなわち購入後に似合わない服を着て外出した時の体験を考えて、「こちらはお客様には似合わないのでやめた方がいいです」と言うべきです。こうした対応の方が、結果的にはお客様のロイヤルティ向上、すなわち次回の来店動機にもなるのではないでしょうか。
コンタクトセンターにおいても、同様です。今後、お客様がどんな体験をするかを想像した対応がカスタマーサクセスです。決して現状のコンタクトセンターに営業的なKPIを取り入れることではなく、一歩先の顧客体験を考慮することで、離反防止やリテンション率向上につなげていくことが肝要です。
ということで僕は、ダイエットマシンがいかに将来の自分たちの暮らしの充実につながるかを理論武装してから再度説得に入ります。無理かな〜。
図 カスタマーサクセス定義の違い