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2020年1月号 <インタビュー>

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山谷 拓志 氏

勝敗だけで決まらない商品価値
プロスポーツ経営に学ぶ「CX」の高め方

茨城ロボッツ・スポーツエンターテインメント
代表取締役社長
山谷 拓志 氏

モノではなく、「体験」を売る──熱狂的なファンが存在する企業はほぼ例外なく、経営者がこの意識を持っている。その最たる例が、スポーツやエンターテインメントだ。2014年に経営破綻したプロバスケットボールチーム、茨城ロボッツを再建に導いた山谷拓志社長に、「結果(勝敗)に依存しないCX向上施策」を聞いた。

Profile

山谷 拓志 氏(Takashi Yamaya)

茨城ロボッツ・スポーツエンターテインメント
代表取締役社長

一般社団法人日本バスケットボールリーグ専務理事を経て現職。Bリーグ1部に所属するプロバスケットボールチーム「宇都宮ブレックス」運営会社の前代表であり創業者。日本トップリーグ連携機構による優秀GM表彰「トップリーグトロフィー」を2008年から2年連続で受賞。

──プロバスケットボールビジネスに関わられることになった経緯を教えてください。

山谷 学生時代から続けていたスポーツはアメリカンフットボールでした。新卒で入社したリクルートでも、30歳まで選手を続け、コーチも経験しました。その後、リンクアンドモチベーションに転職し、スポーツマネジメント事業に携わるようになり、ちょうどバスケットボールのプロ化の動きがあるなか、縁あってプロバスケットボールチーム「栃木ブレックス(現・宇都宮ブレックス)」の運営会社の設立に関わり、代表を務めることになりました。

──ビジネスとして、プロバスケットボールにどのくらいの可能性を感じましたか。

山谷 バスケットボールは世界的にもメジャーなスポーツです。国内でも1990年代には漫画「スラムダンク」や、NBAのスーパースター、マイケル・ジョーダンの影響で人気が上昇、一時期はサッカーを上回る競技人口がありました。にもかかわらず、プロスポーツとして国内ではなかなか成立しませんでした。1試合3000〜5000人集客すればビジネスとして成り立ち、天候に左右されづらい屋内スポーツで中止のリスクも少ない。バスケットボールは、ビジネスとしての参入障壁が低く、ポテンシャルも高いと感じました。実際に、栃木ブレックスでは、日本人初のNBAプレーヤー、田臥勇太選手を獲得できたことも貢献し、設立から3年目で日本一となり、その後3期連続で黒字を達成しました。その実績を買われ、2014年に経営難となった、当時のつくばロボッツの再建を任されました。

──つくばロボッツは茨城ロボッツに名称を変え、2018ー19年シーズンには1試合あたりの来場者数が平均1879人に達するなど、見事、再建を果たしました。その秘訣を教えてください。

山谷 経営から選手まで、顧客視点を徹底することです。その意味で、バスケットボールがプロ化したことは大きな転機でした。選手は、プロになるとファン(顧客)に意識が向くようになります。企業の実業団に所属する選手は、「その企業の社員が喜んでくれたらいい」という内向きの意識に陥りがちです。それも悪いことではありませんが、プロチームとして利益を生むことにはつながりにくい。プロのプレーヤーは、自分たちのプレーで魅了し、ファンを集めなければなりません。ファンがどのくらいつくかが、チケットの売り上げや自身の報酬に直結します。ファンを集めようという責任感と、ファンの期待に応えようという意識で、顧客視点が自ずと身についていくと感じます。

(聞き手・石川 ふみ)
続きは本誌をご覧ください


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