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2019年6月号 <CS戦略>

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渋江良彦氏(左)と宮本和明氏(右)

渋江良彦氏(左)と宮本和明氏(右)

<コーナー解説>
カスタマーサービスに注力し、コールセンターやWebサイト、アプリなどを有効活用し成長している企業のキーマンに戦略を聞きます。

HENNGE

クラウド時代に情報と企業を守る

企業プロフィール

設立:1996年11月
所在地:東京都渋谷区南平台16-28 グラスシティ渋谷
代表者:小椋一宏
事業内容:クラウド・セキュリティサービスの開発・提供

 ITソリューションにおいて、「クラウド・ファースト」はもはや当然の選択だ。しかし、10年前までは「もし停まったら業績に関わる」「顧客DBや個人情報が入っているメールサーバーの外部運用は不安」という意識が強かった。

 HENNGE(東京都渋谷区、小椋一宏社長)の中核はクラウド・セキュリティサービス「HENNGE One」の開発・提供だ。導入実績は5200社以上で、アカウント数にして400万ユーザーを超えている。

 創業は1996年。メール配信システムなどを中心に展開し、サービス形態がクライアント/サーバー型からクラウド型に少しずつ変化してきたが、決定的に潮目が変わったのは2011年の東日本大震災だった。BCP対策が求められた結果、「むしろクラウドの方が業務が完全停止せずに済む」という認識が広まり、ニーズは一気に拡大。同社は「停まらないシステムを、安心して利用していただくためのソリューション」(宮本和明副社長)としてクラウド型のシングルサインオンサービスでニーズに応えた。現在は大手SI各社とのパートナーシップのもと、業種を問わずさまざまな大企業に導入されている。

 典型的なBtoBのITサービスであることから、「クライアントの成功が自社の成長をもたらす」という“カスタマーサクセス”の概念とマッチングする。カスタマーサクセス・ディビジョンの渋江良彦マネージャーは「チャーン(離反)が発生しないことで収益が保証されるビジネスモデル。CS部門のミッションは、“長期的な関係構築”です」と言い切る。カスタマーサクセス・ディビジョンは約70名体制で、同社内では最大規模だ。セルフサービスにも取り組んでいるが、渋江マネージャーは「“人+テック(技術)”によるお客様視点のサポート」を重視している。

 最重要視しているKPIは、NPS(ネット・プロモーター・スコア)。顧客に、「他者への推奨度」を聞くこの質問を投げかけるとともに、「カスタマージャーニーを描き、顧客体験とNPSの相関関係を検証、改善する取り組み」(渋江氏)を絶えず繰り返している。

 同社は、2019年2月にHDEから社名変更した。創立メンバーでもある宮本副社長は「もともとは学生ベンチャーで、挑戦することでビジネスを拡大しました。しかし、セキュリティ商材が中心であるがゆえに、安全で失敗しないというビジネスにシフトした結果、新しいモノを生み出すことが困難となってきたのです」と課題を説明する。クライアントもパートナーも日本を代表する企業が多いだけに、「安全第一で、新しいチャレンジが減ってきた」(渋江マネージャー)という。そこで「失敗しながら新しいモノや価値を提供してもいい、という意味を込めて、“変化”と“Change(チェンジ)”を合わせた造語であるHENNGEと変更しました」(宮本副社長)。

 今後は、常に顧客に新しい価値を提供するという挑戦を続けることで、顧客の成功を支援する「カスタマーサクセス企業」としての成長が期待される。


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