中央には運営状況を把握し相互にコミュニケーションできるスペースを設けた
チャット対応を実施しているブース
各執務室は指紋認証で出入りを管理
NTTマーケティングアクト
「人材を活かすIT」を続々と導入
1000名規模の雇用を生むオムニチャネル拠点
愛媛県松山市。四国を代表する名湯・道後温泉を擁し、明治の文豪、夏目漱石ゆかりの地でも知られる同市は、人口51万人、コールセンターの誘致にも熱心で複数の企業が進出している。
このほど、同市の中心部に開設されたのが、NTTマーケティングアクトの新センター、通称「MiraiZ 松山(ミライズ松山)」だ。“未来へ飛翔する”というコンセプトのもと、AI(人工知能)など最新のITソリューションを採用している。
チャット対応をすでに稼働
MiraiZ 松山は最大700席。NTTマーケティングアクトは1000名のスタッフを採用する方針で、すでに約600名(2019年2月現在)が勤務している。
最大の特徴は、「オムニチャネル対応」「VOC分析」「FAQ作成支援」といった最新のソリューションを活用したサービス拠点である点だ。
スマートフォンのLINEやクライアント企業のWebサイトを介したチャットで顧客対応を実践。しかもボットによる自動対応と有人対応を有機的に連携したコミュニケーションが可能だ。すでに機器メーカーや電子決済サービスの顧客対応などを実施している。
同センターの元木広幸センター長は、「ある程度、シンプルな業務に絞るなど、ルール作りが重要」とチャット対応のポイントを強調する。さらに「チャット業務の募集への反応は電話よりも多く、拡張は可能」と手応えを感じている。
加えて、音声認識システムを活用したオペレータ支援(FAQのレコメンドなど)、VOCの自動要約や分析といった高度なサービスも提供可能だ。カスタマーソリューション事業推進部長の山本英治取締役は、「VOCやFAQは、単なるツールではなくクライアントの皆様の経営資産。すでに実績のある金沢や名古屋センターと連携し、より高い付加価値を提供したい」と意気込む。
山本英治取締役(左)、元木広幸センター長(右)
設備と人材で万全の「BCP対策」
松山市の最大の特徴について、元木センター長は「コンパクトシティ」と表現する。同センターのある三番町を含め、市電やバスがくまなく交通網を敷いていて、交通の便はかなりいい。さらに市街地とオフィス街、住宅街がコンパクトにまとまっているので、多くの市民は自転車で移動する。同センターにも、350台を止めることができる駐輪場を設置している。
地震などの災害の際、BCPの観点から最も大きな課題となるのが「通勤手段の確保」だ。自動車や、電車が主な通勤手段のエリアでは、自宅の被害が軽微で出勤可能だとしても、通勤できないケースが頻発する。その点、約半数が自転車で通勤しているMiraiZ 松山は、人材確保の点で優位性が高い。しかも、もともとはNTT西日本が新たに建設しただけに耐震性は万全。2018年の北海道胆振東部地震の際には、札幌市で丸2日間、停電して機能停止に陥ったセンターが多かったが、同センターの自家発電装置は3日間、電気を供給できる。
もちろん、就業満足度を向上する取り組みも進めている。カフェテリア形式の休憩スペース、広々としたロッカーやパウダールームなど、とくに女性を意識した設備が充実。制度面でも有期契約社員や派遣社員の無期契約を積極的に進める方針だ。山本取締役は、「人材をコストではなく資産と捉えて、長く働いてもらう環境を作りたい」と強調した。
「市を代表するIT拠点」への期待
2月4日には、同社の横山桂子社長、NTT西日本の小林充佳社長、愛媛県知事の中村時広氏、松山市長の野志克仁氏が出席し開所式が開催された。
小林社長は、「(MiraiZ 松山は)電話だけでなく、チャットやAIを活用したさまざまな手段でお客様対応できる次世代のコンタクトセンター。1000名の市民の皆様を採用する予定で、ビジネス拡大とともに、松山市の皆様の期待に沿える拠点にしたい」と挨拶。中村知事、野志市長の両氏は、「環境にやさしく、災害にも強い。県を代表するIT拠点として、雇用面についてもできる限りサポートしたい」と期待を述べた。
2月4日の開所式。知事、市長も出席