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2019年1月号 <特集>

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特集扉

早期離職を防ぐ
「最初の90日」の乗り越え方

Part.1 <現状と課題>

“半分も残らない”事態を招く
「4つのギャップ」の正体と対策

初期研修やOJT段階での離職防止は、永遠の課題だ。とくに、人手不足が極まっている現在、この防止こそがセンター運営の成否を分けるといっても過言ではない。採用からOJT終了までに要する期間は、多少のばらつきはあるが、概ね90日間程度。募集広告、面接、集合研修、OJTの各ステップにおけるポイントを、事例各社の取り組みと専門家の経験をもとにまとめる。

 「面接で聞いていた話と違う」「こんなに覚えることがあるとは思わなかった」「トレーナーさんとSVさんの言うことが違いすぎる──オペレータが入社早々に退職してしまう理由の多くはさまざまな局面で発生する“ギャップ”にある。その発生の防止とフォローが、早期離職を予防する唯一の手段といえる。

 編集部が実施している「コールセンター実態調査」では、「入社1年以内のオペレータの離職率」を聞いているが、5年前の2013年の回答と比較すると、離職が大幅に増加していることが一目瞭然だ。回答企業の実に22%が「71%以上」と回答している。かつてのような“大量採用、短期契約”を前提としたマネジメントが通用する時代ではない以上、労働集約型の職場としては危機的状況といってよい。

 本特集では、「募集〜面接」「初期(集合)研修」「OJT」のステップごとに、現場で発生しがちなギャップを抽出、その対策を検証する。

図 新人オペレータの離職率の推移

図 新人オペレータの離職率の推移

※画像をクリックして拡大できます

Part.2 <ケーススタディ>

正社員・契約社員・派遣社員
雇用形態別に見る「ミスマッチ防止策」

早期離職を防ぐ“最初の90日”の工夫について、雇用属性が異なる4社の事例から検証する。正社員が中心のアメリカン・エキスプレスではリファラル採用を強化。オリックス生命保険は、長崎市で地域限定正社員モデルが成功。東京海上日動コミュニケーションズは、アンケートで契約社員の不満・不安を抽出。SBI証券は、派遣会社への十分な説明で早期離職を防いでいる。

CASE STUDY 1:アメリカン・エキスプレス

既存社員のロイヤルティ醸成で
「リファラル採用」「定着」を促す

 基本的にオペレータを正社員で雇用するアメックス。新卒採用も行っているが、多くは中途採用だ。なかでも最近、力を入れているのが、既存社員が知り合いを紹介する「リファラル採用」である。

 リファラル採用を成立させる秘訣は、既存社員に“紹介したい”と思わせること。つまり、社員のロイヤルティを醸成することが欠かせない。同社では成長実感できる評価制度や、勉強できる環境、キャリアアップの仕組みを構築している。

CASE STUDY 2:オリックス生命保険

「激戦区」で早期離職を1ケタに抑えた秘訣
“新人同士でフォローする仕組み”の構築

 オリックス生命保険は2016年、保険会社のコールセンターがすでに多数進出している長崎市にコールセンターを開設した。進出が後発であることから、経験者の応募を見込んでいたが、予想に反してそれは少なく、未経験者を中心に徐々に規模を拡大してきた。

 早期離職を防止するために気を付けているのは、(1)初期育成や業務環境について事前に十分説明する、(2)正社員採用、(3)既存組織への適合性を見抜く、(4)初期研修で帰属意識を醸成、(5)助け合う風土づくりなどだ。これらの取り組みにより長崎センターの1カ月以内の離職はゼロになった。他市センターでも同様の施策や工夫を実施し、離職予防に取り組んでいる。

CASE STUDY 3:東京海上日動コミュニケーションズ

お金は採用よりも定着にかける!
ES向上、コミュニケーション強化に投資

 東京・多摩市にある東京海上日動コミュニケーションズのコールセンターには、約360名の契約社員が在籍し、近隣在住の主婦が多く活躍している。

 同センターでは、リーマンショックの直後からコスト削減を徹底した結果、離職率が上昇。2014年には約25%に達し、そのうち半分が6カ月以内の早期離職だった。採用難も重なり、2015年は採用コストが例年の2倍に達した。

 そこで既存人材の定着を図るとともに、採用も強化しており、採用時時給の引き上げ、面接官のトレーニング、研修期間の見直しなどを実施。取り組みの結果、6カ月以内の早期離職率が半減。2018年の採用コストはピーク時の3分の1になった。

CASE STUDY 4:SBI証券

最大の課題は「派遣会社との関係強化」
毎月の説明会で“マスト”と“ウォンツ”を提示

 埼玉県熊谷市に立地するSBI証券のコールセンターは、主に派遣社員を活用している。業務拡張が続くなか、毎月平均10名ほど採用している。

 一般的に派遣社員には交通費を支給しないケースが多いが、それでは採用可能な地理的範囲が限られることから、同社では2018年から全額支給を開始した。これにより、都内や隣県まで採用範囲が拡大したという。さらに自動車通勤を許可し、採用時時給を引き上げ、ベビーシッター助成金制度を導入、採用強化を図った。

 12社も活用している派遣会社に対しては毎月説明会を実施、人材要件を細かく伝える。派遣法改正を受けて、2018年7月から直接雇用への切替も進めており、派遣社員からパートや契約社員に切り替わった社員もいる。

 執務室や休憩室のリニューアルなどファシリティにも投資を行った結果、派遣会社が実施しているリファラル採用にもつながった。

 派遣社員であっても、手厚い育成や福利厚生、環境整備が有効だということを示す好事例だといえる。


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