誤りがちなカスタマージャーニーマップのゴールと目的
ISラボ 代表 渡部弘毅
新婚ほやほやの芸能人カップルが、「目標がかないました!」と幸せいっぱいの顔で記者会見しているニュースを見ると、「結婚を目標にしていると、そのうち別れるぞ!!」と思ってしまう、わたちゃんです。ちょっとヒガミも入っていますが。
カスタマージャーニーとは、顧客が製品やサービスを認知して購入、さらに購入後に活用や運用し、商品のリピーターや推奨者になるまでを「顧客の旅」に捉えたプロセスのことです。その一連の行動や心理を時系列で可視化したものを「カスタマージャーニーマップ」と呼びます。カスタマージャーニーを明確化すると顧客志向の施策立案につながるため、昨今ではとくにマーケティン部門などで盛んに取り組まれています。
しかしながら、カスタマージャーニーマップが絵にかいた餅になってしまい、具体的な業務改善の施策に展開されていないケースも見られます。社内のメンバーが集まり顧客視点で行動や心理を洗い出すことは有意義な活動ですが、具体的な施策に展開できていないのです。このままだと、素晴らしいコンセプトであるカスタマージャーニーは、ただの流行り言葉(バズワード)と化して、やがて消えていくことになりかねません。
その要因はさまざまですが、取り組み目標が間違っているという根本的な原因のこともあります。
カスタマ—ジャーニーは、顧客ライフサイクルを考慮しなくてはなりません。長期間で顧客視点に基づく価値ある施策を立案することが目的であり、目の前の購買につなげるための施策の立案手法ではないのです。つまり、顧客のロイヤルティを向上させるための施策を創造することが主目的です。しかしながら、カスタマージャーニーのセミナーや書籍を見ると、「カスタマージャーニーは購買に至るプロセス」と定義したかのような解説が多く見られます。つまり、需要を喚起し購買に至らしめるためのプロセスで、企業からどうアプローチしていくべきかといった、“ファネルマネジメント”に焦点が当たっています。こうした考えでは、従来のプロダクトアウト的な施策が中心となり、顧客体験を向上させるまでには至りません。
言い換えれば、ロイヤルティを向上させる活動を最優先する、いわゆるロイヤルティファースト経営のための施策を立案する目的で取り組むことが重要です。コトラーのマーケティング4.0においてもこうした点が指摘され、マーケティングの重要指標を「購買」から「推奨」に変更すべきと指摘しています(図)。
ということで、新婚うかれカップルには「これからの、ともに命が尽きるまでの長いジャーニーを考慮したライフプランを立案しなさい」と助言を送りましょう。旦那さんには「これから始まる修行と苦難のいばら道に耐えていくんだ!」とエールを送りましょう。
図 マーケティング4.0におけるカスタマージャーニー