「最適解」より「満足解」の時代?
ISラボ 代表 渡部弘毅
アパレルショップで何を買おうかと迷っていると、店員さんが薦めてくれるものに決めてしまう、わたちゃんです。いくつか店員さんが選んできて「これがお似合いですよ」と言われると、「それください」というパターンで、たいがい高い方になっています。意思決定とは難しいものなのです。
経営にはさまざまな意思決定の場面があります。そして、意思決定プロセスには2つの種類があります。ひとつは最適解を導き出すやりかた、もうひとつは満足解を導くやりかたです。最適解とは、意思決定をする側が、すべての選択案を洗い出し、その中から最も適した案を吟味して選択する手法です。一方、満足解は最低限求める“要素”をあらかじめ決めておき、身近にある2〜3の選択案から即座に決める方法です。
なだらかな右肩上がりの経営状態や市場環境の未来がある程度想定される状況であれば、すべての選択肢を洗い出して検討するという最適解の導き出し方が最適な意思決定の手段とされていました。ところが、経営環境や技術トレンドが目まぐるしく変化する市場においては、スピード重視で、最適解より満足解で決定することが望ましいと言われています。
図 最適解と満足解の意思決定
これは私生活でもあてはまります。レストランで何を食べるかなかなか決められずにいつも仲間の中で最後に注文する人や、服を買おうとさまざまな店舗を歩き回って疲れきったあげくに、「やっぱりやめておこう」と買わずに帰る人は、最適解で意思決定しているのかもしれません。また、結婚したいけどできずに婚期が遅れる人も、最適解で意思決定しているケースもあります。女性の場合だと、いわゆる「いつか王子様が白馬にのって私を迎えにきてくれる!」という願望を持ち、いつまでも最適解との出会いを待ち続けているタイプです。別名「白馬王子様症候群」とも言います。
これに比べて、満足解で相手を選ぶ人は早いです。あっという間に結婚し、別に比べる人が現れるとすぐ乗り換える人もいます。松田聖子ちゃんはおそらく満足解のタイプと言えるでしょう。
市場変化が激しい昨今では経営では満足解の意思決定が望ましいと言われますが、経営には我慢も必要なので、満足解で決定したら我慢して頑張ることも重要です。次々と比較するものが出てきて乗り換えていたのでは社員がついてきません。
聖子ちゃんが経営者だったら、即決かつ朝令暮改タイプかもしれません。でも、「聖子ちゃんならついて行きたい!」──これがカリスマの魅力なのです。アパレルショップで店員さんに決定権をゆだねてしまう僕としては、満足解の意思決定でぐいぐい引っ張ってくれる聖子ちゃんタイプの上司が最適なのかもしれません。